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過去の大津波の教訓伝える祭り-「キュウリ」「ミル」「マツナ」?二見興玉神社

過去の大津波の教訓伝える祭り-「キュウリ」「ミル」「マツナ」を海に流す祭り、二見興玉神社竜宮社で

過去の大津波の教訓伝える祭り-「キュウリ」「ミル」「マツナ」を海に流す祭り、二見興玉神社竜宮社で

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 二見興玉神社(伊勢市二見町)の境内社「竜宮社」で6月16日、過去の大災害の教訓を忘れないように戒め、災害が起こらないように祈願し、被害者への供養を行う神事「郷中施(ごじゅうせ)」が行われた。舞女(巫女)らが腰まで海に漬かり「キュウリ(野菜)」「ミル(海草)」「マツナ(海草)」の供物を小船に載せ海に流した。

2人の巫女が腰まで海に浸かり供物を流す「郷中施」興玉神社竜宮社で

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 二見町の江(え)と茶屋(ちゃや)地区の住民らが参列し執り行われる同祭は、1792年5月15日にこの地域で発生した大災害(大津波)をいつまでも忘れないように毎年旧暦の5月15日に執り行われる。「郷中施」の名は、村中の人たちが助け合い、施し合って水難から立ち直ったことからつけられたという。供物の「キュウリ」「ミル」「マツナ」には、子どもから大人まで理解できるように語呂合わせで「(大津波を)急に、見るな、待つな」の意味を持たせている。

 祭典では、「天地(あめつち)の神にぞいのる朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を」昭和天皇の御製を拝誦(はいしょう)し、巫女(みこ)による「浦安の舞」が舞われた。同神社の片岡昭雄宮司は、郷中施の供養・祈願とともに、東日本大震災被災者への供養、早期復興を祈願する祝詞(のりと)を読み上げた。

 茶屋区長の森慶之(よしゆき)さんは「当地区でも防災計画を見直し、大規模災害に備えようと準備している真っ最中。過去の教訓から学び、さらに防災意識を高めなければ」と話す。

 同地区では郷中施を重要な祭りの一つとし、この日に食事をする習わしが残る。同地区の食堂「多市屋」を経営する五十子(いらご)博さんは「先代から、郷中施の日にはスズキ、ナスビ、カボチャ、オゴ(海草)を出すように言われてきた。昔からこの地区では家族で食事をしながら郷中施について語り、言い伝えてきた。しかしながら、近年の核家族化や生活スタイルの多様化などからその風習も無くなりつつある」と危惧する。

 茶屋地区の女性は「郷中施の祭りが、毎年気を引き締めてくれる。代々受け継いでいかなければ」と話す。

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