「大麻(たいま・おおぬさ)」と呼ぶ伊勢神宮のお神札(ふだ)のご神体となるスギ材を神宮林から切り出す「大麻用材伐始祭(たいまようざいきりはじめさい)」が4月19日、伊勢神宮の森の中にある丸山祭場(伊勢市宇治今在家町)で行われた。
「大麻」の元となる木を切り始める祭典-伊勢神宮で「大麻用材伐始祭」
萌黄(もえぎ)色が美しい神路山を正面に見る祭場は、木々に囲まれ野鳥のさえずりが聞こえる神宮林の中。祭典が始まると、まるで始まりの合図のように突風が吹き、辺りの木々がザワザワと揺れた。神饌を奉納し、作業の安全を祈願する祝詞(のりと)が奏上されると、次に素襖烏帽子(すおうえぼし)姿の小工(こだくみ)が神路山に向かってオノを3回振り下ろした。鷹司尚武大宮司や高城治延少宮司を始め神職・職員らが参列し、祭典を静かに見守った。
大麻は、「御真(ぎょしん)」と呼ぶご神体を和紙で包み中心に納めたもので、神棚などに祭る伊勢神宮のお神札のこと。御真は、切り出したスギを製材し半年間、風雨にさらしヤニを取り、乾燥させ、厚さ約1ミリの木地に加工し丁寧に和紙で巻いたもの。
大麻は、大きく分けて、伊勢神宮で直接授与する「授与大麻」と全国の神社に頒布される「頒布大麻」の2種類がある。内宮と外宮にそれぞれ「天照皇大神宮」「豊受大神宮」と書かれた「角祓(かくはらい)」「大角祓い」「剣祓(けんはらい)」の3種類6体と海上安全・大漁満足を祈願する「海幸大麻」がそれぞれ1体づつある。また14の別宮にもそれぞれの宮名の「剣祓」1体づつがあり、神宮の神楽殿や社務所などで受けることができる。
「頒布大麻」はかつて、伊勢神宮への参詣者を全国から呼び込み案内などをしていた今でいうツアーコンダクターのような役割を兼ねていた御師(おんし・おし)が、新しい神札や暦(こよみ)を持って全国の崇敬者に頒布していたもの。御師制度の廃止により現在は、神社本庁を通じて全国各地の氏神を祭る神社に頒布され、各家庭に届けられるようになった。