伊勢神宮の祭典などで使う米を栽培する神宮神田(伊勢市楠部町)で9月2日、秋の実りに感謝し、稲を刈り取る「抜穂祭(ぬいぼさい)」が執り行われた。
今年4月4日に耕作始めに当たる「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」が行われ種をまき苗を育て、5月10日に地元楠部町の「神宮神田御田植祭保存会」のメンバーらが中心となってお田植え祭「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」が行われた。今年も順調に生育し約5カ月で稲が大きく実った。
この日は、鷹司尚武大宮司や高城治延少宮司ら神職や地元楠部町の住民らが見守る中、黄色の装束を着た作長(さくちょう)の山口剛さんの指示で白装束の作丁(さくてい)2人が神職より授けられた忌鎌(いみがま)と呼ぶ鎌を持って神田に入り、黄金色に色づいた稲を刈り取った。刈り取った稲を10人の作丁がその場で稲穂だけを1本ずつ抜き取り、麻のひもで2つに束ねて「抜穂」を作り、神さまに奉納した。
計21枚に区画された神田の面積は約3ヘクタール。水は伊勢神宮を流れる五十鈴川から引き込み、うるち米の「チヨニシキ」「キヌヒカリ」「イセヒカリ」や、もち米の「カグラモチ」「アユミモチ」など十数種を栽培する。
同神田ではこの後、天候などを見ながら約1カ月をかけ全ての稲を刈り取り、神田のほとりで数日間乾燥させ、内宮の「御稲御倉(みしねのみくら)」に150束、外宮の「忌火屋殿(いみびやでん)」に108束を納め、10月15日から始まる「神嘗祭(かんなめさい)」で初めて神さまに新米をささげる。
1989年、同神田は2度の台風襲来を受け、ほとんどの米が倒され全滅したかと思われたが、田の中央に2株だけ倒されず残っている奇跡の稲が見つかった。その稲から種苗を取り増やした「幻の米」を「イセヒカリ」と呼ぶ。