2005年8月から伊勢神宮を撮り続ける写真家の稲田美織さんが今年7月、世界の聖地を巡って撮影した写真とその聖地についてのエッセーを一冊にまとめたフォトエッセー「奇跡に出逢(あ)える世界の聖地」(小学館)を出版した。
ニューヨークに17年間住んでいた稲田さんは、2001年9月11日に起きた同時多発テロを自宅アパートから目撃。「テロの後、あまりの悲劇に神様は人類をどこに導こうとされているのか知りたくて」と、世界中の聖地を巡ること決意。本書では世界11カ国の旅を紹介する。
ネーティブアメリカンの聖地・アメリカ「フォーコーナーズ」「セドナ」、ハワイの神域「ヘイアウ」、ギリシャ「サントリーニ島」、トルコ「パムッカレ」「カッパドキア」、メキシコ「チチェンイツァ・マヤ遺跡」、イスラエル「エルサレム(岩のドーム)」「ツファット(嘆きの壁)」、パレスチナ「エリコ(聖ゲオルギウス修道院)」「ベツレヘム(聖誕教会)」、カンボジア「アンコール遺跡」、ウクライナ「キエフ(聖ソフィア大聖堂・ペチュルスカ大修道院)」、チベット「アムネマチン」、フランス「モン・サン・ミッシェル」「ルルドの泉」などを旅し、最後に日本「伊勢」の伊勢神宮にたどり着いた。
稲田さんは「聖地を巡って人々の祈りの原点を見た。そして全ての祈りの場は、尊くて美しいものであることが分かった。テロから6年後に伊勢神宮に導かれた時、ここに私が求めていた鍵があると確信し、式年遷宮のお祭りを9年間撮影させていただいた。本書では、私がこの9年間の撮影で学ばせていただいた『人類が地球上で自然と調和して生きていくためのヒント』を写真と文章で描かせていただいた」と振り返る。
「日々の中でふと思い立ち、聖地に行く。そうするとさまざまなものがリセットされ心と身体が軽やかになる。背筋を伸ばしフッと肩の力を抜いて、感謝を込めて一心に祈る。自我を捨てて全てを天に預けてみると、自然と一番良い方向に導かれるような気がする。そしていくつかの偶然が重なり、いろいろなことが整ってくる。それを人々は『奇跡』というのかもしれない」と漏らす。「全ての人、一人ひとりに奇跡に出逢える聖地が世界のどこかに必ず存在する。聖地に行こうと思った瞬間、すでに巡礼は始まっている」と締めくくる。
今年11月、ニューヨークの国際連合本部ビル、コロンビア大学、ブルックリン植物園の3カ所で伊勢神宮の展覧会を開催した稲田さん。「伊勢神宮の光を世界に発信させていただけてとても幸せ。テロから13年目に、私は活動の原点に戻ることができ、このような機会(展覧会開催や出版)を持てたことは、何か見えざる手に導かれたような気がしてならない」とも。
価格は1,944円。