寒波の影響で伊勢地方にも雪が降り一気に気温が下がった2009年12月31日大みそかの夜20時、伊勢神宮内宮の参道の真ん中に準備された大かがり火に火が灯った。
金網に長い棒を取り付けた手づくりの「道具」を持参する参拝者が次第に増える。「道具」はかがり火の火で餅を焼くためのもの。いつのころか定かではないが、伊勢市民を中心に大みそかの風物詩になった。
0時の時報とともに新年を迎えると参拝者は一気に増え、空には満月が参拝者の足元を優しく照らし続けた。3時51分ごろから月の一部がかけ始め4時23分に最大に、その後4時54分ごろ元に戻る部分月食が元旦の早朝、広域伊勢志摩圏内でも観測できた。宇治橋の上から満月を見上げ部分月食に気がついた参拝者は「すごい」「めずらしい」とカメラを向けていた。
伊勢神宮の鬼門を守り続けているという金剛証寺(こんごうしょうじ)が建つ朝熊岳(あさまだけ)に登ると、初日の出を見ようと大勢の人が集まっていた。観光有料道路の伊勢志摩スカイラインを運営する三重県観光開発(津市)の発表では12月31日~1月1日までに1,064台の自動車がゲートをくぐったという。
水平線からの朝日は見ることができなかったが7時9分、雲の上から神々しく2010年最初の朝日が現れると、その瞬間を共有した人たちは大きな拍手とともに「おめでとう」と新年の挨拶をし合った。
金剛証寺は6世紀半ば欽明天皇の頃、暁台上人によって開山、平安時代(825年)弘法大師(空海)によって堂宇が建立され、密教修業の大道場として隆盛。現在は臨済宗南禅寺派、本堂には日本三大虚空蔵菩薩の1つに数えられる「福威智満虚空蔵大菩薩」と伊勢神宮「天照大神」を祭り神仏習合の思想を伝える。本尊は、20年に1度伊勢神宮の式年遷宮の翌年に開帳する。