英虞湾の入り口と太平洋を見下ろす眺めの良い恵比寿ヶ丘(志摩市浜島町)に、1934(昭和9)年から鎮座する高さ約2メートルの巨大えびす像の鼻が、今年も何者かによって、取られてなくなった。
1月20日の「鼻かけ恵比寿」の別名を持つえびす像の鼻はきれいに付いている
宇気比神社境内の恵比寿神社(同)で、海に向かって「ワッハッハ」と初笑いする恒例の「初恵比寿大祭」が1月20日、大漁満足、家内安全、商売繁昌などを願って執り行われた。
その翌日の21日9時30分ごろ、同神社西井憲三宮司が確認したところ、何者かによってすでに取られてなくなっていたという。西井宮司は「ここにご奉仕させていただくようになって60年近くが経つが、毎年えびすさんの鼻が取られてなくなってしまう(笑)。いつのころか『鼻かけ恵比寿』と呼ばれるようになった」と説明する。
「鼻を取る」は「先を取る」「先頭を行く」の意味から、漁師が誰よりも早く漁場に行けるように験担ぎに、いつのころからか、えびす像の鼻をハンマーか何かで叩いて持ち帰る風習が行われるようになった。
新しい鼻は、西井宮司が今年の1月9日大安吉日に祝詞をあげた後、コンクリートを混ぜ、取り付けた。西井宮司は「鼻を取り付ける際には、コンクリートの中にお神酒も少し入れ、祈りを込めている」と秘話も打ち明けた。