日本一海女の多い町、鳥羽市の相差町(おおさつちょう)で7月14日、 「クジラの背中に乗った観音様」の伝説に由来する「天王くじら祭り」が開催された。
「クジラの背中に乗った観音様」の伝説に由来する「天王くじら祭り」
奈良時代の天平勝宝のころ(749年~757年)、同地区の鯨山岬の下で夜になると光るものが現れ、村人たちは海怪獣では?と恐れていた。そこで一人の男「浜の平」が原因を突き止め退治することに。毎夜、男が確認に行くと、小さな観音像がクジラの背中の上で光っていることがわかった。男はクジラが居眠りをしている隙に観音像を取り、仏壇に祭った。ある時、男は「山に帰りたい、私は荒れ狂う白浜の波を沈めるために出かけて行った。私は元々、青峰山正福寺(鳥羽市松尾)の本尊の中にいた仏だ。だから早く山に帰りたい」と観音像が訴える夢を見た。翌日同寺へその観音像を戻しに行った。以来その伝説が伝わり、漁師や海女などの漁業者、海に携わる関係者から厚い信仰を受け、大漁や海上安全などを祈願する寺となった。その本尊の十一面観音菩薩のご開帳が50年に一度行われ、前回は1989(平成元)年に行われた。
「天王くじら祭り」はその伝説を基に、同寺で観音像のご開帳があった1989年から始まり、今年25回を数えた。大・中・小のクジラみこしが町を練り歩き、子どもから大人まで町中の人が参加する。祭りのクライマックスは、男たちによって大クジラのみこしが海まで運ばれると海女らに担がれ海に入った。
同町は、「3世代海女」で人気を集める中川寿美子さん(74歳)、早苗さん(41歳)、静香さん(22歳)が活躍する町でもある。この日、女子大生でミス伊勢志摩にも選ばれる静香さんは、赤い法被を着て参加。大クジラのみこしの先頭で大団扇をあおぎながら、男たちに風を送っていた。
「天王くじら祭り」が終わるとこの地方にも、本格的な夏が到来する。