伊勢神宮に8年間通い続けた写真家・稲田美織さんが11月、その集大成となる写真集「伊勢神宮 水のいのち、稲のいのち、木のいのち」(亜紀書房)を出版した。
写真家・稲田美織さんの写真集「伊勢神宮 水のいのち、稲のいのち、木のいのち」(亜紀書房)
ニューヨークに17年間住んでいた稲田さんは、2001年9月11日に起きた同時多発テロを自宅アパートから目撃。その後、「国際都市」であるはずのニューヨークが、宗教間の戦いの様になっていくのを実感した稲田さんは、「それぞれの聖地の神様が人類をどこに導こうとされているのか、自分の目と肌で感じたいと思い、世界中の聖地を訪れようと撮影の旅に出た」と話す。
稲田さんは「全ての聖地は美しく、また祈る姿も尊いものだった。ただ、聖地のすぐそばが戦地であったり、聖地をめぐって争いが起こったり…。何かがスッキリしなかった。結局、『調和への鍵』を求めてたどり着いたのが伊勢神宮だった。導かれるようにして神宮の神域に足を踏み入れた瞬間、何かが違うことを直感。心と体と魂がどんどん軽くなっていくような気がした」と振り返る。
同書は、「水のいのち」「稲のいのち」「木のいのち」「四季の巡り」の4章からなり、カラー写真77点と稲田さんの詩やエッセイが収められている。また10月に行われた20年に一度の式年遷宮「遷御(せんぎょ)の儀」での神様が新宮に遷(うつ)る渡御(とぎょ)の様子も特別に収録した。
稲田さんは「生命、季節、水、精神性、技術など森羅万象全てのものは循環し、調和のバランスを生み出している。神宮を撮影させていただき、その『循環』に改めて気づかせていただいた。式年遷宮という循環の仕組みがあるからこそ、全ては未来につながっていく。神宮の調和の光は、人類を灯す美しい光になるだろう」と思いを込める。
価格は2,200円。