伊勢神宮内宮(ないくう)別宮の「月読宮(つきよみのみや)」(伊勢市中村町)と同境内に並列して建つ「月読荒御魂宮(つきよみのあらみたまのみや)」の屋根のかや葺(ふ)き作業が終わり屋根に飾り金物「甍覆(いらかおおい)」を取り付ける祭典「甍祭(いらかさい)」が3月20日、造営中の両宮で行われた。
もともと平安時代には屋根の大棟(おおむね)の両脇下の雨押さえの板「障泥板(あおりいた)」を取り付け、鰹木(かつおぎ)を上げる儀式とされていたという甍祭。昨年の7月21日に内宮正殿、同23日に外宮正殿でそれぞれ行われた同祭では、甍覆と千木(ちぎ)、御形短柱(ごぎょうづか)を取り付けたが、別宮では正殿よりもさらに質素に仕上げるため甍覆のみとなる。
この日は早朝から雨が降り、月読宮には雨天ならではの清らかな空気が漂っていた。祭典では小工(こだくみ)と呼ばれる宮大工2人が2つの甍覆を取り付ける所作を行った。実際に甍覆を取り付けると新しい社の完成となる。
遷宮が始まった9年前からディレクターとして取材を続ける三重テレビ(津市)アナウンサーの一色克美さんは「三重テレビでは、内宮遷御(せんぎょ)を生中継するなど全国へ発信してきた。その後のマスコミ各社の遷宮に対する取材も一段落したように感じるが、まだまだ遷宮は終わっていない」と話す。
「人知れず古式に則ってきちんと営まれている別宮の遷宮を伝えることこそ重要で、地元テレビ局の大切な役割だと思っている。正殿では見えなかった(非公開だった)ためにわからなかった祭典の様子も、正殿よりも距離が近いのでよくわかり興味深い。これからも継続して取材し、20年ごと62回続けられてきた遷宮の本質に迫りたい。(遷御の時もそう感じたが)この場に立ち会えていることが喜び」(一色さん)とも。