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三重県が「斎王の宮殿」復元-平安時代を感じる施設に

三重県が伊勢神宮に仕えた「斎王の宮殿」を復元-平安時代を感じる施設に

三重県が伊勢神宮に仕えた「斎王の宮殿」を復元-平安時代を感じる施設に

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 三重県は現在、多気郡明和町斎宮(さいくう)柳原地内に斎宮復元建物の建設を進めている。12月20日には、建設作業の一般公開が行われた。

「斎王の宮殿」を復元、屋根に使われる檜皮葺き作業

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 斎宮とは、「斎王(さいおう)」が生活していた「宮殿」や「斎宮寮」のこと。斎王とは、天皇に代わって伊勢神宮に仕えた天皇の皇女で、天皇の代替わりごとに皇族女性の中から選ばれ、都から伊勢に派遣される。伊勢神宮起源伝承で知られる倭姫命(やまとひめのみこと)を斎王とみなすこともあるが、その実態はよく分からない。歴史的文献などから推測すると最初の斎王は、天武天皇(670年ごろ)の娘=大来皇女(おおくのこうじょ)とし、制度が廃絶する後醍醐天皇の時代(1330年ごろ)まで約660年間に、60人余りの斎王の名が残されている。

 三重県は、1970(昭和45)年から斎宮跡の発掘調査を開始。1979(昭和54)年、東西約2キロ、南北約700メートル、面積約137ヘクタールの斎宮跡が国の史跡の指定を受けた。

 復元建物は、斎宮跡内で発掘された掘っ立て柱建物跡の柱穴を元に、学術的な検討に基づき、平安時代前期(9世紀)に斎宮寮長官らが、儀礼や饗応(きょうおう)に使ったと推定される建物で、高床式入り母屋造りの「正殿」(延べ約95平方メートル、高さ約8メートル)、同切り妻造りの「西脇殿」(延べ約162平方メートル、高さ約8メートル)と土間床切り妻造りの「東脇殿」(延べ約90平方メートル、高さ約7メートル)の3棟を建設する。今年4月から建設を開始し来年7月の完成を目指す。

 今回で5回目となる見学会には建築関係者や三重大学の学生、地元町民など150人以上が参加。この日は、屋根にヒノキの皮を敷き詰める「檜皮(ひわだ)作り・檜皮葺(ぶ)き」(檜皮は、国の選定保存技術)の作業について説明、実際の工法などを実演した。

 国宝・重要文化財建造物の保存修理工事などを手がける田中寺社(岐阜県岐阜市)の青山亨さんは「檜皮葺きで代表的な建築物は出雲大社や清水寺、善光寺などが挙げられる。檜皮葺きは日本の伝統的な屋根工法。檜皮は、樹齢100年以上のヒノキの樹皮を採取し5年以上乾燥させてからでないと使えないなど手間暇も掛かるため、檜皮葺きの屋根は日本一高価な屋根」と説明する。

 斎宮歴史博物館(明和町)調査研究課の大川勝宏さんは「できるだけ平安時代の建物を再現しようと試みている。現在伊勢神宮の建物ではヒノキが中心に使われているが、おそらく平安時代には近くに自生していた木を使って建てていたと考える。今回復元する正殿は、古代から中世にかけて用いられた木を削って平板にするための道具ヤリガンナを使って28本の柱やハリなどを加工し再現する。ここに来れば、斎王さまが生活していた平安時代を感じてもらえる施設にしたい」と話す。

 次回見学会は来年1月24日。屋根に檜皮を葺く実際の作業などを見学する。見学会は来年6月まで実施する予定。

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