「お相撲さんが伊勢に春を運んでくる」として人気の恒例行事「神宮奉納大相撲」が3月29日、神宮会館(伊勢市宇治中之切町)内の神宮相撲場で行われた。主催は、伊勢神宮崇敬会(会長=豊田章一郎さん)。
9時30分ごろ、八角親方(元横綱北勝海)を先頭に新記録34度目の優勝を果たした横綱白鵬、日馬富士らが伊勢神宮内宮(ないくう)正宮を参拝。いつもは玉砂利を踏みしめる音が静かに響く参道が、思わぬ力士との遭遇に驚きざわめいた。
続いて11時ごろ、五十鈴川に架かる宇治橋を封鎖し、神職の先導により白鵬や日馬富士ら力士が渡った。伊勢神宮内宮神苑(しんえん)では、「三役そろい踏み」(稀勢の里、豪栄道、照ノ富士、隠岐の海、玉鷲、妙義龍)のほか、白鵬(太刀持ち=魁聖、露払い=旭天鵬)と、日馬富士(太刀持ち=照ノ富士、露払い=誉富士)による不知火(しらぬい)型の「手数(でず)入り」(土俵入り)の奉納が行われた。約8000人の相撲ファン、参拝者らが詰め掛けた。
この日は小雨が降っていたが、白鵬と日馬富士の両横綱の手数入り奉納が始まると、ちょうど天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祭られている正宮の方角から太陽が顔を出し雨が止み、その瞬間詰めかけた人たちからもどよめきが起こった。手数入りが終わると再び太陽は雲に隠れて小雨がパラパラと降りだした。
同相撲場では、7時から稽古相撲や、十両、幕下、三段目などの力士による取組が行われたほか、禁じ手を紹介する「初切(しょっきり)」やのど自慢の力士が歌う「相撲甚句」なども披露された。60回を記念して7人の力士が白鵬のまわしに白い綱を固く締め付ける「綱締め」も特別に披露。幕内力士上位16人によるトーナメント選士権では、小結妙義龍が玉鷲をはたきこんで優勝。会場は、約3800人の観衆で埋まった。