
伊勢神宮の専用の水田「神宮神田」(伊勢市楠部町)で9月2日、稲を刈り取る「抜穂祭(ぬいぼさい)」が行われた。
神宮神田の総面積は約10ヘクタール、神田の作付面積は約3ヘクタール。祭典用水田の面積約862平方メートル。神田には神宮の祭典で使う新米のほか餅や酒の原料用として、うるち米やもち米を作付けする。
日本神話「天孫降臨」で、高天原(たかまがはら)で行っていた稲作をアマテラスから子孫のニニギに託したことをルーツに、伊勢神宮では「稲作・米作り」を尊び、五穀豊穣(ほうじょう)への祈りを日々行っている。神宮で執り行われるほとんど全ての祭典がこの稲作に通じている。
快晴で風もなく穏やかな初秋の当日、4月の「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」で種をまいて育てた稲が穂を垂れて大きく実り、神宮神田が黄金色に変わっていた。
白い斎服を着た久邇朝尊(くにあさたか)大宮司ら神職と黒基調の和装・洋装の楠部町の住民らが見守る中、黄金色の装束をまとった神宮技師・山口剛作長(さくちょう)の指示で作丁(さくてい)と呼ばれる作業員2人が神職より授けられた忌鎌(いみがま)と呼ぶ鎌を持って神田に入り、黄金色の稲を刈り取った。刈り取った稲を10人の作丁がその場で稲穂だけを一本ずつ丁寧に抜き取り、麻緒(麻のひも)で2つに束ねて「抜穂」を作った。
山口作長は「今年も順調よく生育してくれたので良かった。今年は実の付き具合も良く束ねた『抜穂』もふっくらとしているように思う」と話す。
神宮神田では、9月末を目標に全ての稲を刈り取り、数日間乾燥させ、内宮(ないくう)の「御稲御倉(みしねのみくら)」に150束、外宮(げくう)の「忌火屋殿(いみびやでん)」に108束を納め、10月15日から始まる「神嘗祭(かんなめさい)」で初めて神様に新米をささげる。