恒例の伊勢・二見興玉(おきたま)神社(伊勢市二見町江、TEL 0596-43-2020)の夫婦岩の大しめ縄の張り替え神事が5月5日に執り行われた。
二見・興玉神社夫婦岩、法被姿の氏子らによって真新しい大しめ縄がピンと張られた。
1本の長さが約35メートル、重さ約40キロ、太さ約10センチの大しめ縄5本を高さ約9メートルの男岩(おいわ)と約4メートルの女岩(めいわ)にかける。毎年5月5日、9月5日、12月19日の計3回張り替えられる。大しめ縄は1本1本一般の参列者も交えて手から手へ渡し、法被姿の氏子らによって真新しい大しめ縄がピンと張られた。この日は雨にもかかわらず約800人の参列者が張り替え神事を見守った。
5月の張り替え神事では、もう一つの恒例行事となっている「ハマボウ(黄槿)」の苗のプレゼントがある。苗は、松阪市三雲町在住の刀根政郎さん(92)が2000年から同神社に奉納するのを受けて一般参拝客に配布しているもの。
大東亜戦争に従軍した刀根さんは、相手国の攻撃で鉄帽に敵弾を受け意識を失った。軍医が鉄帽を調べた結果、鉄帽にお守りとして入れていたわずか2センチほどの陶製のカエルのお守り「無事カエルお守り」が衝撃を緩和し九死に一生を得たが、フィリピン北方のバーシー海峡で戦友3万人を亡くした。ハマボウの奉納は、その恩返しと戦友への慰霊のため。
刀根さんは「興玉神社へ感謝の気持ちと、戦友への慰霊のため可能な限りこれからも奉納したい。ハマボウは河口や海浜に咲き、きれいな黄色の花を咲かせる。落花するとそのまま海に流れるのを見て、世界に通じる海に落ちた花が戦友たちへの献花となれば」と思いを込める。
同神社職員は「ハマボウの苗を奉納いただく5月の大しめ縄の張り替え神事は、自分たちにとっても特別なもの。世界の平和を切望する純粋な刀根さんの思いをハマボウの苗に託して、気持ちを込めてお渡している」と話す。