今年も10体以上のウミガメが産卵に訪れている志摩市の国府海岸の7月28日早朝4時50分、冬場でも見ることが珍しく夏場に見ることはさらに珍しい「サンピラー(太陽柱・太陽光柱)」らしき自然現象が現れた。
サンピラーは冬場の寒い時期に現れる自然現象の一つで、上空大気中の氷晶(氷の結晶)に太陽の光が反射して生じる現象のことをいう。サンピラーを作る氷晶は六角形の板状で、氷点下15度以下でないと生成されない。風など大気中の空気の動きが少ない時に、氷晶が地表に対してほぼ水平に浮かぶため太陽の光が反射して起こると言われる。
この日の日の出時刻は5時ちょうど。4時40分ごろ、辺りが明るくなり太陽が出る方角が一際明るくなった。4時48分ごろから水平線に垂直に一筋の光が縦に長く伸びていく。縦に伸びた光は4時50分から5時2分ごろまで光を放ち続けた。その後朝日が現れると太陽の強い光の影響で見えなくなった。
滋賀県立高島高等学校教諭で、気象光学現象に詳しく琵琶湖で蜃気楼の観察を15年以上続ける琵琶湖蜃気楼研究会代表の伴禎さんは「サンピラーは日本において、冬場の北海道などで発生した様子が新聞テレビで報道されるため、『冬場の自然現象』『厳冬期の北海道のみで見られる』というような先入観があるが、夏季でも上空には氷晶が生成されるために、(サンピラーが)発生しないとは言い切れない。写真では日の出前後に太陽の上方に光の柱が現れているのでサンピラーの要素を満たしているが、サンピラーだと断定するにはこの時間に氷晶が豊富に存在していたか?が問題となる。断定はできないが、サンピラーの可能性はないとは言えない」と説明する。
伴さんは「上空大気中にサンピラー状の現象を起こす氷晶が存在していたこと、日の出や日の入りの前後で数日に1回の割合で見られるというものでないこと、光の柱がすべて隠されなかったこと、天候に恵まれたこと、カメラを持ち合わせたこと、この現象に気付いたことなどの数々の幸運に恵まれた『結晶』では」と感想を漏らした。