志摩市安乗(あのり)漁港などで水揚げされる天然トラフグ「あのりふぐ」が「ふぐの日」とされる2月9日、伊勢神宮内宮に奉納された。奉納は、豊漁と安全を祈願したもので「あのりふぐ協議会」(志摩市阿児町安乗)のメンバーら30人が行った。
奉納した「あのりふぐ」は体長約40~60センチで、13匹約28キロ。中には1匹で3.7キロの大きさのものもあった。協議会メンバーらはそろいの法被姿で宇治橋を渡った。偶然居合わせた参拝客は、直接トラフグに触りその大きさに驚いていた。
「あのりふぐ」は、三重県志摩半島から伊勢湾、遠州灘の沿岸地域で10月1日~翌年2月末に漁獲される体重700グラム以上の天然トラフグのこと。2003年に、漁業者、漁協、観光協会などが一体となって「あのりふぐ」のブランド化を目指し「あのりふぐ協議会」を設立。「あのりふぐ」の定義を明確化し商標登録を行い、志摩市内に限定した「あのりふぐ取扱店」認定制度などを実施した。その実績が評価され、2005年には「地域づくり総務大臣表彰・地域振興部門」、農林水産省の先進事例「立ち上がる農山漁村」に、2008年には三重県の「三重ブランド」に選ばれた。
同協議会の浅井利一会長は「昨年は初日に10トンの水揚げをするなど、年間約40トンが取れ豊漁だったが、今年は出漁日数が少なく現在まで約15トンと不漁。さらに、景気が悪いため価格も上がっていない」と説明する。
「あのりふぐ」の漁が今では主軸になっているという漁師暦約30年の豊栄丸・片山徹さんは「あのりふぐのブランド化に成功し、これまで価格も上昇傾向にあったが、景気の後退とともに需要がないのか、価格も下がってきた。食べる人には値段は安い方がいいし、漁師は高い方がいいし…。それでもやはり食べてもらいたいから、価格は安い方がいいのかな?どんどん宣伝し、もっともっと認知してもらえるように」とトラフグの需要喚起に願いを込める。
同協議会所属の宿泊施設では「あのりふぐ」料理を求めて、主に関西からの宿泊客も増えているという。