「海を呑む 茶の子の餅か 不二の雪」と一休禅師が詠んだ句をもとに作られた富士見亭竹屋(伊勢市朝熊町岳)の「茶の子餅」が朝熊岳金剛證寺(同)の開山忌(6月27日~29日)に合わせて販売されている。かつては毎日販売していたが、現在はこの期間にしか作らない幻の餅となっている。
同句は、一休禅師が朝熊岳に登った際、奥の院富士見台から富士の遠景を眺め詠んだとされる。餅は、その当時食べられ名物となっていたものを、100年以上続く同店の創業者が考案した。「茶の子」から抹茶を餅に混ぜ、餡(あん)をその餅で包んだもの。価格は15個入り=700円、5個入り=300円。
同店3代目の竹内昭也さんは「先代(親父)が生きていたときは毎日販売し、他店にも卸していた。今では参詣者も少なく、1年間にこの時期にしか販売していない」と話す。実際には6月25日からの5日間限定の「幻の餅」となっている。
先代・2代目の妻で現在同店を切り盛りする竹内民子さんは「昔は多くの人が『岳参り』にやってきて、ここで『茶の子餅』や『みそ田楽』を食べ休憩するのを楽しみに来てくれる人も多かったが、当時東洋一と呼ばれたケーブルカー(朝熊登山鉄道)が1944(昭和19)年に休止、岳参りそのものの風習が衰退し、参詣客が減少。それに伴い売り上げも減少し、毎日販売できなくなった」と打ち明ける。
「昨年は最終日、仏地禅師の命日6月29日の午前中に完売した。『懐かしい』と言って買ってくれる客も多い。岳参りのついでに立ち寄っていただければ」(竹内さん)とも。
営業時間は9時~16時30分、友引の暦の日が定休。