鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)の人気者雌のジュゴン「セレナ」が4月15日で入館25年を迎え、同館飼育スタッフから愛情の込もった特製の「海草ケーキ」がプレゼントされた。
「セレナ」の大好物5種類の海草(アマモ、リュウキュウスガモ、ボウバアマモ、ベニアマモ、マツバウミジグサ)でデコレーションされた特製の2段重ねの「ケーキ」が、飼育スタッフの若井嘉人(よしと)さんと半田由佳理さんによって運ばれると、「セレナ」は喜んだ様子でアマモをほお張った。若井さんと半田さんは「セレナ入館25周年 おめでとう!」と書いた横断幕まで準備した。
現在、ジュゴンを見ることができる水族館は、日本では同館だけ。世界中でもオーストラリア、インドネシア、シンガポールに1頭づつ飼育されているだけの貴重な動物で、国際保護動物に指定されている。1995年に「ジュゴンに関する国際シンポジウム」を同館で開催した。
同館のジュゴン飼育歴は、1977年5月入館の雌の「じゅんこ」が約8年1カ月、同年9月入館の雄の「じゅん太郎」は17日。昨年2月に死んだ雄の「じゅんいち」は1979年9月入館で、長期飼育世界記録の31年152日(11,475日)を達成した。
フィリピンの現地の言葉で「人魚」を意味するという「セレナ」は、フィリピンのアキノ大統領(当時)から日比友好のシンボルとして1987年4月15日にプレゼントされ入館。入館当時は体長約150センチ、体重約66キロだったが25年経過し、体長約250センチ、体重約380キロと大きく成長した。
同館は、1985年6月「じゅんこ」の死をきっかけに同年9月、フィリピンと共同で野生ジュゴンの生態調査に乗り出し、故片岡照男副館長をリーダーとする「ジュゴン・チーム」を結成。調査は航空機をチャーターした空からの目視調査、ダイバーによる海中調査、現地の人からの聞き込み調査など本格的なものだった。調査を続けていた1986年10月、台風が去った海に生後半年ほどの小さなジュゴンが母親からはぐれて泳いでいるのを発見。生後間もないジュゴンは母乳で育ち1頭では生きていけないため保護し、同スタッフらにより懸命に育てられた。その時の小さなジュゴンが、今もなお元気に同館の水槽で泳ぐ「セレナ」。
「セレナ」にケーキをプレゼントした若井さんは、25年前に迷子になった「セレナ」を保護し日本へ持ち運んだ「ジュゴン・チーム」の一員。これまで謎だったジュゴンの生態が、同館の飼育スタッフらによって解明され基となり、今も世界中へ情報発信されている。