朝日新聞の創設者・村山龍平(りょうへい)の出身地でもある三重県度会郡玉城町の「ふるさと納税」が人気を集め、合計件数で本年度、三重県1位になりそうだ。
玉城町の特産品を入れたバラエティーセットが「ふるさと納税」で人気に
同町の人口は1万5556人で、世帯数は5487世帯(2012年末現在)。南北朝時代、南朝の拠点として北畠親房が築いたとされる田丸城跡が残り、大和を結ぶ「初瀬街道」と熊野を結ぶ「熊野街道」が合流し、かつては伊勢神宮参詣客でにぎわう宿場町だった。田丸城跡に役場や村山龍平記念館、中学校(玉城町田丸)がある。税金など公金のクレジット収納を全国で初めて導入した。
ふるさと納税とは、出身地の自治体だけでなく全国どこにでも寄付することができ、寄付金額に応じて所得税と住民税から一定範囲内の控除を受けることができる制度。ふるさと納税を行った場合、その年の所得税と翌年度の個人住民税がそれぞれ控除される。現在、寄付した人に対して多くの自治体が地域の特産品などの「特典(お礼の品、感謝の品)」を贈っている。県内29の自治体の中でも玉城町のほか、大紀町や伊勢市、鳥羽市、南伊勢町、熊野市など13の自治体が何らかの特典を用意。津市や亀山市も本年度(昨年4月)から特典を付けた。
これまでの玉城町への寄付件数と寄付金合計金額は、2008年度が68件268.5万円、2009年度が122件523万円、2010年度が224件440.5万円、2011年度が380件1,178.5万円と右肩上がりで増加。しかしながら2008~2009年度の件数では三重県1位だったが、2010~2011年度で大紀町に逆転され2位に。2012年度は昨年12月までの時点で約1100件(金額は未集計)あり(大紀町は約500件)、このまま順調にいけば三重県1位に返り咲くことが見込まれる。同町総務課の岩木良佑さんは「通常12月に集中する寄付申し込みが1月に入ってからも増加し、1月17日現在1月だけで106件の申請があり1200件以上となっている。ほとんどが県外の方からの寄付」と話す。
同町では、1万円以上の寄付に対して同町の特産品(米、玉城豚の精肉、ハム、しょうゆなど)5,000円相当の特典を贈っている。同町産業振興課地域振興係長の中川泰成さんは「寄付金1万円に対して8,000円の控除が受けられるため、実質2,000円の負担で5,000円相当の特産品が届くことになる。全国に先駆けて導入したクレジットカードによる払い込みが可能なことなど、そのお得感と利便性が(玉城町を)選んでもらっている理由なのでは」と推察する。
さらに中川さんは「通常確定申告に合わせて11~12月に寄付申請が集中するが、今年は1月の寄付申請が多い。雑誌やブログなどで紹介されたことや、1月末まで期間限定で米やハムなどが入るバラエティーに富む『特産品セット』を提供したことが良かったのかも」とも。「寄付いただいた方が玉城町の特産品を食べ、ファンになっていただき、さらにリピーターとして毎年寄付していただき、足を運んでいただけるようになれば」と期待を込める。
総務省によると、「ふるさと納税」による寄付金総額は2009年度が3.3万件約72.6億円、2010年度が3.3万件約65.5億円。全国で最も人気が高いとされる鳥取県米子市はふるさと納税専用サイトを作り、わかりやすく寄付申請が出きるように努力している。地元企業とのタイアップなどの効果により、本年度はすでに5420件7,000万円以上(1月17日現在)を集めている。