真珠を育むアコヤ貝に感謝し、美珠の御霊(みたま)に供養する「真珠祭」が10月22日、真珠養殖の中心地・英虞湾に浮かぶ賢島(志摩市阿児町神明)で行われた。
例年賢島の小高い丘の上にある円山公園の真珠供養塔前で行われる供養祭だが、今年は雨天のため急きょ会場を賢島宝生苑(同)に移し、10万個(15貫=56キロ)以上の真珠を海に投げる「真珠放生会」も同会場内で行われることになった。
真珠放生会は、会場に用意した磯桶から磯桶にアコヤ貝と真珠を移す形の簡素なものになったが、例年通り3人のミス伊勢志摩による真珠の放生もあり、アマチュアカメラマンらミス伊勢志摩の番になるとカメラを構えシャッターチャンスを逃さなかった。ミス伊勢志摩の頭には真珠のティアラ、耳には真珠のピアス、首には真珠のネックレスが輝いていた。
今年で63回目を数える同祭は、全国から真珠関係者(生産者、加工業者、販売業者など)が一堂に集うことから、真珠業界の情報交換の場となっている。日本真珠振興会の大月京一さんは「消費税増税の懸念材料はあるが、経済の回復傾向により真珠の需要も高くなってきている」とあいさつ。
一方、会場の生産者は「われわれ真珠養殖業者のところまでは、景気による恩恵は今のところ全くない。景気が良くなって真珠が売れ出したとしても、真珠の値段が上がるのは3~5年後。苦労して育てても、それに見合う見返りがないので若い者がどんどん辞めていく」と嘆く。
神明真珠養殖漁業協同組合の代表理事組合長を務める谷口博俊さんは「真珠の養殖は順調良く、生育している。このまま順調良く育ってくれれば」と期待する。
志摩市は2012年度から2015年度までの4年間、「志摩市里海創生基本計画」を策定。「自然の恵みの利用と保全との新たなバランスを再生すること」を掲げ、「稼げる、学べる、遊べる、新しい里海のまち・志摩」をキャッチコピーに包括的なまちづくりとして取り組んでいるが、真珠養殖業者の願いが形になるにはもう少し時間が掛かりそうだ。