志摩市の英虞湾一帯で真珠養殖の最後の作業・クライマックスとなる真珠を取り出す「珠出し・採集」作業が最盛期を迎えている。一方でその知らせは、真珠を取り出した後に出る副産物「アコヤ貝の貝柱」(以後貝柱)の旬がやってきた知らせでもある。
「磯料理 ヨット」で提供される「パールチャーハン」「貝柱のバター焼き」「貝柱の刺し身」
志摩産の魚介類をメーンに提供する飲食店「磯料理 ヨット」(志摩市浜島町、TEL 0599-53-0486)でも12月から、アコヤ貝の貝柱料理をメニューに追加した。「今しか食べられない旬を求めてわざわざ当店にまで食べに来てくれる客がいる」と同店店主の岩崎博光さん。同店では「パールチャーハン」(1,100円)や「貝柱のバター焼き」(950円)、「貝柱の刺し身」(800円)などを提供。
真珠養殖は、春4月~7月にアコヤ貝に真珠核を入れる挿核作業をし、英虞湾の海の中に吊るし、アコヤ貝が最適な環境で育つように養生や沖出し、避寒など、養殖場所を変えるなどして、冬12月~1月に珠出しを行う。1~2年間海の中で育つと、挿入した真珠核に真珠層が幾重にも巻き、真珠特有の光沢が出るようになる。真珠養殖業者にとっての球出し作業は、最も楽しみの一つであり、これまでの苦労を全て忘れさせてくれるひとときでもある。
愛媛県の宇和島や熊本県の天草周辺でも同様に真珠養殖が盛んなため、貝柱が冬の味覚になっているが、あくまでも真珠を作るための副産物なので貝柱の数量は限られ、ほとんどが地元だけで消費されている。近年は、グルメブームによって食材としての価値が高まったことに付け加え、真珠の価格下落で少しでも収益につなげようと貝柱を販売するようになった(昔は貝柱を販売するという概念が無かった)。この地方では昔から貝柱を親戚や知り合いの家庭に配る風習がある。
「昔は今よりも真珠養殖業が盛んだったため、貝柱がたくさん配られ、どんぶりで食べたのに、今では考えられないぜいたくなことやな~」と残念がるのは地元でこの時期によく聞くお決まり会話。
岩崎さんは「冷凍保存していつでも食べられるようにこの時期に大量に仕入れておくが、刺し身で食べることができるのは今だけ。志摩に足を運ぶきっかけにしていただければ」と呼び掛ける。
同店の営業時間は11時~18時(日曜・祝日は17時まで)。火曜定休。