日本~米国間約9000キロメートルを結ぶ光海底ケーブル「FASTER(ファスター)」が6月15日、来年「伊勢志摩サミット」が開催される志摩市阿児町の海岸に陸揚げされた。
【その他の画像】早朝から作業が開始された「FASTER」光海底ケーブル陸揚げ作業
光海底ケーブルの「FASTER」は、KDDI(東京都千代田区)、China Mobile International(中国)、China Telecom Global (同)、Google(米国)、SingTel(シンガポール)、Global Transit (マレーシア)の6社が昨年8月11日に共同建設協定を締結したもの。システム供給はNEC。総建設費は約3億米ドル。日本「千倉第二海底線中継所(千葉県南房総市)と南志摩海底線中継所(志摩市阿児町)」の2カ所と米国オレゴン州バンドンを結ぶ太平洋の海底に敷設する。
今後動画コンテンツのリッチ化やIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の普及などによるトラフィック量(2015年からの5年間で約4倍)の増加を見込み、東日本(千倉)と西日本(志摩)で災害発生時の冗長化、米国とアジアの最短ルートでの接続などが主な目的。
最新の高品質光ファイバーケーブルとDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing、=高密度波長分割多重方式)により、世界最大規模の初期設計容量60Tbps(テラビットパーセコンド)を実現する。60Tbpsは、高精細映像(15Mbps)を約400万人が同時にストリーミング視聴することができる速度。
最新のケーブルは絶縁機能が優れ、直径も通常の20ミリから17ミリに抑え軽量化しているという。1本の光ファイバーの直径は約250ミクロンで100ギガ×100波分を直径約3ミリに12本束ね、ケーブルが切れないよう2重のワイヤが入った直径約4センチのチューブで巻く。全長約9000キロメートル分のケーブルの総重量は約5400トン。実際には海底の起伏に合わせて敷設するため約3%分加算した全長となる。
この日の作業は、北九州で製造したNEC製の海底ケーブル約550キロメートル分を積載したケーブル敷設船「KDDIパシフィックリンク」が沖合1.6キロに停泊、ダイバーらによりケーブルを結んだロープを引っ張り陸揚げし中継局までつないだ。
その後、ケーブル敷設船は敷設作業を開始し、60キロメートルごとに増幅器を設置しながら200キロメートル沖合まで敷設後、7月に今度は千倉からは沖合350キロメートルまでケーブルを敷設する。日本海溝では水深9200メートルの深さまで達する場所にも敷設するという。8月には約8500キロメートル分のケーブルを載せたケーブル敷設船(外国船)が米国バンドンから敷設を開始し11月、志摩と千倉のケーブルを船上でつなぐ予定。
同社グローバル技術・運用本部長の梧谷重人(きりたにしげと)さんは「運用開始は来年4月を予定している。伊勢志摩サミット開催前までには運用できるだろう。(サミット開催で)責任が大きくなった」と話す。
現在志摩市には、PC-1(日本-米国)、EAC(日本、アジア各国)、AJC(豪州-日本)、APG(日本、アジア各国)、Japan-US(日本-米国)、C2C(日本、アジア各国)の光海底ケーブルが陸揚げされ「光海底ケーブル銀座」とも言われている。
KDDIの前身「KDD」が日米間の最初の太平洋横断ケーブルTPC-1(日本-グアム-ハワイ-米国、約1万キロメートル)の運用を開始したのが1964年6月19日。昨年、50周年となった。KDDIの調査によると、日本の国際トラフィックの99%は海底ケーブルを経由しているという。