二見興玉神社(伊勢市二見町)の摂社で飛び地にある「栄野(えいの)神社」(同)で1月14日、「湯立(ゆたて)神事」が行われた。
湯気の立つ水滴を参拝者たちに振り掛ける儀式で知られる同神事。いわれを伝える文献は災害などで喪失し残っていないが、約200年前から伝わるという。
この日は、早朝から氏子たちが井戸からくみ上げた水を直径約1メートルの大釜に移し、夫婦(めおと)岩の沖合の底に沈む興玉神石(おきたましんせき)に生える「アマモ」から作った無垢(むく)塩草を入れてはらい清め、まきで火をたいて煮立てた湯を準備した。
神事が始まると神職らが、束ねたクマザサを沸騰した湯の中に入れ、勢いよく左右左に振り上げた。続いて、巫女(みこ)が読む和歌「煮えたぎる 湯玉の露を自らに 受けて清めよ 身の禍事(まがごと)を」に合わせ、クマザサを振りながら大釜の周りを2周する「湯立舞」を行った。
氏子たちが軽く頭を垂れると、巫女が湯に浸したクマザサを勢いよく振り、水滴が白い湯気と共に弧を描いて参拝者たちの頭上に降り掛かった。思わず「あちぃ」と声を出す人の姿もあった。
神事で使ったクマザサは神が宿ると言われ、神事の後は参列した氏子たちに配布する。神棚などに飾っておくと、家族が1年間を無病息災で過ごせるという。
愛知県名古屋市在住の山本美佐代さんは「フェイスブックで湯立神事の情報を知り、初めて訪れた。最前列で湯を浴びて熱かったが一年の家族の健康を祈って耐えた」と笑顔を見せていた。