伊勢神宮外宮(げくう)勾玉池(まがたまいけ)にある「せんぐう館 奉納舞台」で7月30日、かつて薪(たきぎ)の明かりだけで楽しんだ能「伊勢薪能」が行われた。
伊勢薪能は、伊勢神宮の忌火(いみび・清浄な火)と薪を用いたかがり火の明かりで能を演じ、奉納する伊勢に660年に伝わる伝統芸能。一時途絶えていたが1990年、伊勢市商工会議所などが中心になり復活し、今回で27回目を数える。
この日は、いつも留守中に酒を盗み飲みされて困る主人が太郎冠者(かじゃ)を後手に、次郎冠者を棒にそれぞれ縛って出掛けた後の2人が工夫を凝らして酒蔵の戸を開け、酒盛りを始める様子を演じる狂言「棒縛(ぼうしばり)」、三輪山の麓に住む僧侶「玄賓(げんぴん)」の元に、毎日水をくんで来る女性の正体を確かめようとする中でストーリーが展開する能「三輪(みわ)」などが伊勢能楽連盟らによって演じられた。
神宮奉納伊勢薪能実行委員会は現在、伊勢薪能を継承するための資金をクラウドファンディングで募集している。同委員会担当者は「舞台設営・音響照明・告知広告などの催行費用に加え、老朽化に伴うちょうちんなどの備品の補修経費が必要。継承していくための資金協力をお願いできれば」と切望する。