日本で唯一飼育している鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽、TEL 0599-25-2555)の雌のジュゴン「セレナ」が9月15日、入館1万1476日(31年5カ月)となり、長期飼育日数世界一記録を更新した。
「セレナ」は1986(昭和61)年10月10日、フィリピン・パラワン島付近で親とはぐれたところを保護し、翌1987(昭和62)年4月15日、推定1歳のころに同館へ入館。入館時の体長約150センチ、体重約66キロ。当時赤ちゃんジュゴンだったため授乳の必要があり、手探りで人工授乳方法など試行錯誤を重ねて長期飼育に成功。フィリピンの現地の言葉で「人魚」を意味するという「セレナ」は、フィリピンのアキノ大統領(当時)から日比友好のシンボルとして寄贈された。
同館のジュゴン飼育歴は、1977(昭和52)年5月入館の雌の「じゅんこ」が約8年1カ月、同年9月入館の雄の「じゅん太郎」が17日。1979(昭和54)年9月入館の雄の「じゅんいち」は2011年2月10日まで飼育し、長期飼育の世界記録の31年152日(1万1475日)を達成した。
現在、飼育下のジュゴンは全世界で同館とオーストラリアの「シーライフ シドニー水族館」の2館に2頭いるのみ。
この日は「セレナ」の飼育日数世界記録達成を祝いジュゴン水槽前でセレモニーが行われ、大勢の人が「セレナ」を祝福した。
同館の若井嘉人副館長は「当時入社2年目、1986年10月1日に結婚したばかりの新婚だった。あの時『フィリピンに行け』と言われたことは今となってはいい思い出になっている。これまで関わってきた多くの飼育担当者の努力の結果、こうして世界一の飼育記録を更新することができた。これから未知の世界に突入するが、減少するジュゴンを守るために鳥羽水族館の飼育経験と研究成果を生かしていきたい」と話す。