志摩市在住の写真家・泊正徳さんが11月30日、富士山が浮いているように見える写真を撮影した。
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日本最高峰・標高3776メートルの富士山。志摩市から直線距離で200キロ以上離れた場所にあるため、日中はほとんど観測することができない。昼間に観測できるのは年に数回あるかないか。早朝の条件がそろったとき、富士山の観測確率が高くなる。
現在、志摩市大王美術ギャラリー(志摩市大王町)で写真展「舞う」を開催中の泊さんは、日本写真協会会員。1年を通して伊勢志摩からの富士山や伊勢神宮、海女、志摩市の安乗(あのり)地区に400年以上伝わる「安乗文楽(安乗人形芝居)」などを撮影する。
「宙に浮く富士山」は伊勢志摩の海岸から見たときに、海の上に浮き上がったように見える自然現象のこと。海水と水面近くの空気との温度差によって光が屈折して起こる「蜃気楼(しんきろう)」の一種「浮島現象」によって、富士山が宙に浮いたように見える。観測できるエリアは、日本全国の中でも鳥羽市の一部と志摩市からだけ。海抜0メートルの地点から富士山を見ることができる最遠が志摩市となる。宙に浮いたように見えるのは寒くなる冬場だけで、気温が温かい春夏と秋には浮かない。
「宙に浮く富士山」が観測できる条件は、雲がなく見通しがよいことや空気が澄んでいることのほか、富士山から志摩半島までの距離が200~230キロ離れていること。富士山との間に太平洋の海面が続き、陸地に高い山がないこと。沖を流れる暖流=黒潮の影響を受け冬場でも海水温が高く、寒くなると海水温と水面近くの気温の差が大きくなること。
泊さんは「11月に入り、何度か宙に浮く富士山を撮影しているが、くっきりと浮いたように見える富士山を撮影すると、ようやく寒くなってきたんだと実感する。撮影時間は6時8分、撮影場所は阿児町の安乗港から。『宙に浮く富士山』を撮影できるのは、日本で唯一ここだけ。一生に一度は見ていただきたい景色」と話す。