伊勢神宮専用の水田「神宮神田」(伊勢市楠部町)で9月3日、稲を刈り取る「抜穂祭(ぬいぼさい)」が執り行われた。
【その他の画像】黄金色に実る伊勢神宮の田んぼで稲刈り始まる「抜穂祭」の様子
伊勢神宮の内宮(ないくう)を流れる五十鈴川の水を取り入れ、うるち米やもち米を栽培する神宮神田。神宮の祭典で使う米のほか、餅や酒の原料用など、十数種の米を育てている。神宮神田の総面積は約10ヘクタール、作付面積は約3ヘクタール。
神宮神田に設置した祭場には、久邇朝尊(くにあさたか)大宮司ら神職と礼服を着た地元楠部町の住民ら約80人が参列し、黄色の装束を着た神宮技師・山口剛作長(さくちょう)の指示で烏帽子(えぼし)に白装束の作丁(さくてい)2人が神職より授けられた忌鎌(いみがま)を持ち神田に入り、黄金色に実った稲を刈り取った。その後、刈り取った稲を10人の作丁がその場で稲穂だけを一本ずつ丁寧に抜き取り、麻緒(麻のひも)で2つに束ねて「抜穂」を作った。
神宮神田で収穫された新米は、10月15日に始まる「神嘗祭(かんなめさい)」で初めて奉納される。
日本神話「天孫降臨(てんそんこうりん)」には、アマテラスから子孫のニニギに託した「三大神勅(しんちょく)」(「天壌無窮(てんじょうむきゅう)」「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)」「斎庭稲穂(ゆにわのいなほ)」)が日本書紀に記され、伊勢神宮では、「吾(あ)が高天原(たかまがはら)にきこしめす斎庭の稲穂をもて、また吾が児(みこ)にまかせまつるべし」と稲作・米作りの大切さを伝えた「斎庭稲穂」の神勅を守り、稲作を継承する。神宮で執り行われるほとんど全ての祭典が、五穀豊穣(ほうじょう)への祈りに通じている。