
鳥羽市の海岸に5月13日、スナメリの赤ちゃんが打ち上げられているのを観光目的で伊勢志摩を訪れていた岡澤健太さんが発見した。
【閲覧注意】砂浜に打ち上げられたスナメリの赤ちゃん【閲覧注意】
岡澤さんは12日から13日にかけて鳥羽市内のホテルに宿泊。早朝6時ごろ、ホテル前の砂浜を散歩していた時に、打ち上げられていたスナメリを発見した。「浜辺にトンビがいたので動画を撮影しようと近づくと飛び立ってしまった。なぜトンビがいたのか不思議に思い、近づくとクジラの赤ちゃんの死骸だった」と話す。
スナメリは小型の歯クジラの仲間で、体長1.5~2メートルで薄い灰色、皮膚はホットケーキのように非常に柔らかい。イルカのようにくちばしや背ビレがなく、丸い頭に小さな目をしているのが特徴。クジラ類の中では最も小さい。ペルシャ湾から日本近海にかけてのアジアの海に生息し、日本沿岸では大村湾、有明海、瀬戸内海、伊勢湾、三河湾、東京湾、鹿島灘、仙台湾などに分布している。
1973(昭和48)年からスナメリの飼育と研究を行う鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)で30年以上スナメリの研究を続け、未成熟個体を人工保育した経験などを持つ同館飼育研究部長で、スナメリやウミガメなどの野生動物の生息状況をモニタリングし、その生息環境の保護・保全を考え研究する「志摩半島野生動物研究会」I志摩市志摩町)代表の若林郁夫さんが現地に駆けつけ調査した。
若林さんは「スナメリは春から夏にかけて出産し、三河湾、伊勢湾から志摩市、南伊勢町の沿岸部に生息。今年は既に20頭近くのスナメリの赤ちゃんが打ち上げられているので少し心配している。過去にもそうした事例があるので、今の段階で原因が何かは分からないが、今年は特に多い。さまざまなネガティブな要因が重なって起こっているのでは」と説明する。
若林さんによると「打ち上げられたスナメリは生まれて半年くらいたった個体で、全長111.5センチ、打ち上げられて1カ月以上はたっているのでは」と推測する。
若林さんは、調査研究のため個体の皮膚の一部と歯を採取。全長などを実測し終わると、砂浜に穴を掘り優しくいたわりながらスナメリを埋葬した。皮膚と歯は、三重大学(津市)に協力を仰ぎ、皮膚はDNA解析を行い、歯の大きさで年齢を推測するという。
若林さんは「スナメリは水産資源保護法に基づき保護されている野生動物で、勝手に捕まえたり移動させたりすることができない。生きている場合は、海に戻したり、水族館が保護したりするケースもあるが、死んでいる場合でも、個体を調べモニタリングすることで野生動物の保護につながる貴重な情報を得られる可能性がある。もし、そうした場面に遭遇したら、近隣の水族館か行政機関に連絡してもらえれば」と呼びかける。