
広域通信制の代々木高校(志摩市磯部町)が9月1日、1週間に2日通学し、3日アルバイトしながら高校卒業を目指す二刀流コース「伊勢志摩キャリアデザインコース」を開設した。
伊勢志摩サミット閉幕後、議長国記者会見に臨む安倍晋三総理大臣(当時) 賢島宝生苑の英虞湾の見える庭園で
同コースは、経済的な理由で進学を諦めていた生徒に対して、同校が働く環境を斡旋、橋渡しする。生徒は自ら働くことで収入を得て自立し、実社会での経験を積むことで働くことの意義について学ぶことが可能となる。さらに地域の企業の人材不足を解消する社会問題解決の一助となることを目指す。
通信制高校に通う生徒は、年間数回学校に通うだけでよく、そのメリットを生かして積極的に自分のやりたいことを探求できる環境ではあるが、全日制高校で経験する学園生活を実感できない不満もある。
スタート時点では、G7伊勢志摩サミット閉幕後、安倍晋三総理(当時)が議長国会見を行った「賢島宝生苑」(阿児町)と地中海の風景や建築様式を再現した英虞湾に面した「志摩地中海村」(浜島町)の2つの宿泊施設での就労を予定する。
同校の一色真司理事長は「日本は大学進学率が60%近くに達し、大学卒業後の就職が一般的だが、近年、高校卒業後の就職がかつてないほど有利になっている。2025年の大卒の求人倍率が1.71倍に対して高校新卒は3.98倍に。大手企業も積極的に高卒採用に乗り出している。このような背景を受け、高校生の時に社会で働く経験を積んで卒業後、社会で即戦力として活躍できる人材を育てる環境を提供できれば」と説明する。
賢島宝生苑の高尾康二総務部長は「代々木高校卒業生は、23歳の女性はフロント業務で欠かせない存在に、今年卒業したばかりの女性スタッフも現在研修をこなしながら接客などの業務で活躍。社員からもとても評判がよく職場が明るい雰囲気になっている。現在在学中のサッカー部の生徒は練習の合間にアルバイトに来てくれて、とても助かっている。約220人いるスタッフには労働力不足を解消するためベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマー、中国、アメリカからの外国人13人も活躍しているが、当館に宿泊する客は日本人が多いので、客とのコミュニケーションの点で若い日本人スタッフが来てくれることはとてもありがたい。今回の取り組みには大いに期待している」と話す。
同校の堀川泉教頭は「提携先はこれからも増やしていく予定。通信制高校への進学を希望しながら、働く場所も探している生徒には、ほかにも提携企業に就職しながら働いた給料から学費を支払う『奨学金コース』もある。まずは気軽に相談してもらえれば」と呼びかける。