漁村や海女文化など海に関する民族資料を所蔵・展示する「海の博物館」(鳥羽市浦村町)の特別展示室で現在、かつて日本人の暮らしの中で活用されてきた海藻「フノリ」についての特別展「ふのりと日本人」が開かれている。
紅藻類フノリ科の海藻フノリは「布海苔」と書き、日本全国の潮間帯に生息。食用としてみそ汁やサラダにして食べるほか、水溶性食物繊維のフノランが豊富であることから新潟県の織物文化とそばの食文化が融合して生まれた魚沼地方発祥といわれる郷土料理「へぎそば」のつなぎとしても活用される。平城宮から出土した木簡には志摩半島から都に送られたことがわかる「布乃利」「赤乃利」の文字を確認することができる。
食用以外には、煮ると溶けて「糊(のり)」としての粘着性や乾くと固まる性質を利用し、江戸時代の記録には、女性の髪の整え、布織物を美しく仕上げる糊つけ、難産時の滑胎(かつたい)、石灰に土と混ぜてしっくいなど壁塗りに活用。現在でも、筆の穂先を整えたり、大相撲の関取がまわしに付ける「さがり」を固めたりする用途で利用。30年ほど前からは、掛け軸や絵画などの文化財修復のために用いられ代用品がない貴重な存在となっている。志摩市出身の志摩ノ海のさがりも展示する。
しかしながら、日本人の暮らしの中のさまざまな用途で活用されてきたフノリが、近年は、安くて取り扱いが便利な化学成分の代替品に置き換わり、需要が激減。それに伴い、全国各地にあったフノリの加工業者は廃業を迫られ、現在は、伊勢市東大淀町内の2カ所(2事業者)が継承しているだけに。さらに、フノリ資源の減少や加工作業員の高齢化などの問題もあり、その存続も危ぶまれている。
特別展では、海藻のフノリについて、古代からの記録、需要、利用、日本の生産地、伊勢が「板ふのり」製造の最適地であること、「伊勢ふのり」加工業者の記録、消えゆく「伊勢ふのり」加工業者などのテーマでそれぞれ展示する。
同館の平賀大蔵館長は「フノリ利用の歴史とその多様性、加工法とその道具類、文化財修復の現状などを展示・紹介することで、フノリの加工技術とその利用に関心を持ってもらい、加工業の存続の道を考えるきっかけになることを目的に企画した。多くの人に見にきてもらえれば」と呼びかける。
3月22日には「ふのりを探しに海へ行こう」のイベントも開く予定(事前予約、定員20人、料金=500円)。隣接の「cafeあらみ」では企画展限定メニュー「ふのりを味わう海藻スープ」を提供する。
開館時間は9時~17時。入館料は、大人=800円、高・中・小学生=400円。3月31日まで。