太陽と地球と月が一直線に並ぶ皆既月食が12月21日の夕方から約73分間、全国各地で起こった。多くの人が奇跡の天体ショーを見ようと空を見上げた。伊勢志摩地方では興玉神社(伊勢市二見町)の夫婦岩の岩の間から出る赤色の満月を撮影しようと大勢のカメラマンが境内に押し寄せた。
夫婦岩中央に出現する幻想的な「月の出」天候にも左右されるため満月を夫婦岩の中央から見る確率は極めて低い
冬至前後の11月~2月に夫婦岩の真ん中から満月が出ることがアマチュアカメラマンらを中心に知られ、同神社境内の富士見橋が近年、人気の撮影ポイントとして注目されている。さらに空気が澄み、晴れた日には夕方でも直線距離で約200キロの位置にある富士山が見えることがあるため、条件がそろえば境内には100台以上のカメラが並ぶ。
2007年8月28日以来3年4カ月ぶりの今回の皆既月食は、15時32分に欠け始め、16時40分皆既食が始まり、17時53分皆既食が終わり、19時1分部分食が終わる。皆既食の最大時刻は 17時16分。この日の夫婦岩の間からの月の出予定時刻は16時41分。月の出時から皆既月食になる。
この日の天気予報は、北海道と沖縄・九州を除く地方で夕方から曇りまたは雨。数パーセントの確率に望みをかけたカメラマンが境内に殺到した。中には興玉神社夫婦岩の真ん中からの皆既月食と翌日冬至の日に伊勢神宮宇治橋の中心から昇る朝日を撮影しようと大型バスを仕立てて来たツアー客もいた。
15時ごろにはすでに200人以上が世紀の天体ショーを待ち構えていたが、あいにく夫婦岩の間からは顔を出さなかった。ピーク時には約500人が境内に集まった。月の出時刻の16時41分になるとざわざわし出したが、雲は厚く晴れ上がる気配はなく、18時ごろには雨が降りだした。一般客の1人が見えない皆既月食現象に対して「目で見ようとせず、心眼で見よ」と友人に話していた。
夫婦岩は、沖合700メートルの海底に沈む「興玉神石(おきたましんせき)」を猿田彦大神として、4月~8月には朝日がその間から出ることから太陽を日の大神として祭る、本来鳥居の役目を果たしている。19日には「大注連縄張神事」があり、高さ約9メートルの男岩と高さ約4メートルの女岩に張られた長さ35メートルの大注連縄5本が張り替えられたばかり。