海女のおやつで活力源の「きんこ」を使ったプレミアム焼酎「志州隼人(ししゅうはやと)」の試作品が完成した。志摩市商工会「地域資源∞全国展開プロジェクト」の一環で、事業名は「英虞湾の夕日と潮風が育てた『きんこの黄金焼酎』開発プロジェクト」。
「きんこ」は、主に志摩市志摩町越賀地区で栽培するサツマイモ「ハヤトイモ(隼人芋)」の一種を煮て乾燥させた加工品「干しいも」のことをいい、志摩地方の郷土食として親しまれている。名前の由来は干したナマコを「きんこ」といい、その形状にそっくりだから、という説が有力。「きんこ」用に作るハヤトイモのことを「きんこ芋」とも呼ぶ。
志摩・度会商工会広域連合の竹内厚史さんは「ハヤトイモの栽培は痩せた土地が最適だといわれている。しかも普通に食べた場合、通常のサツマイモよりもまずい。イノシシもそのまずさから顔を背けると言われるほど。しかしながら、『きんこ』に加工すると、通常のサツマイモから作ったものと比べ、その甘さと香りで断然おいしくなる。『志摩の海女が作ったものでなければダメ』とこだわる人もいるほど」と説明する。
同焼酎は、越賀産のハヤトイモを加工した「きんこ」を主原料に、米麹を使って製造。製造は「ステラ」などの焼酎や「おかげさま」などの日本酒を製造する酒造メーカー「伊勢萬」(伊勢市小俣町)に依頼した。
伊勢萬のブランドマネージャー溝口武さんは「今回の試作品では『きんこ』を100%使い、きんこ独特の甘みと香りを最大限生かせるようにした。ラベルは少しでも目を引くよう、温かみがありながらも奇抜なデザインに。『きんこ』は志摩の文化そのものだと思うので、それを発信できる商品になればと思う。少しでも地域貢献できれば」と話す。
「『志州隼人』は芋からではなく、高価な加工品の『きんこ』を主原料に作っているのでまさにプレミアム焼酎。新たなブランドが立ち上がり、ハヤトイモの生産が増加し、『きんこ』の加工が盛んになれば、地域の雇用機会が増え、地域に活力が出る」と竹内さん。「ハヤトイモの農業体験や収穫祭、きんこ作り体験教室などの開催にもつなげたい」と意欲をみせる。
今年の夏以降の販売を目指す。