小説家で生前、南伊勢町に移り住み死ぬまでヨットを愛した故・二宮隆雄さんが創設したヨットレース「二宮杯アーリーサマーマッチin南伊勢」が5月28日・29日、志摩ヨットハーバー(度会郡南伊勢町)をベースに五ヶ所湾で開催された。
初日のマッチレースの様子「二宮杯アーリーサマーマッチin南伊勢」
1990年に「疾風伝」で小説現代新人賞受賞した二宮さんは、「覇王の海」「海援隊烈風録」「海を奪る」「たかが秀吉」「武士の名言に学ぶ 戦いの哲学、勝利の条件」など歴史、時代小説を数多く残して2007年9月9日、心筋梗塞のため死去した。現役時代には、全日本ヨット選手権優勝15回のほか、1968年にアメリカ・フロリダで開催された「西半球スナイプ選手権」で優勝し、日本人初の国際レース優勝記録を作る。
同レースは、1対1で上下約1マイルのコースを2周して勝敗を競う「マッチレース」と呼ぶヨット競技の一つで、日本ヨットマッチレース協会(JYMA)1.5グレードの公式レースとして認定されている。優勝すると、7月にロシア・ウラジオストックで開催される国際大会「セブンフィートカップマッチレース」と11月に開催される「全日本マッチレース選手権大会」の出場権が獲得できる。
マッチレースは、ボートスピード、タクティクス(戦術)、攻撃と防御、クルーワーク(選手の技量とチームワーク)、ルールなど、ヨットを走らせるためのすべてが集約され総合力が要になる。生前の二宮さんは1992年、同ヨットハーバーを拠点に当時、日本で唯一のマッチレースクラブチーム「紀州ヨット少年団」を発足、ヨットマッチレースの普及と人材育成に取り組んだ。さらに2005年から五ヶ所湾を舞台に春と秋の2回、「アーリーサマーマッチ」と「オータムマッチ」のマッチレース大会を立ち上げた。二宮さんが亡くなった翌年から春の大会の呼び名を「二宮杯」としている。今大会は、通算7回、「二宮杯」としてから4回目となった。
今大会には6チームが参加、総当たり戦で2日間14フライト(3レースを1フライトとして計算)の結果、長堀裕樹選手が優勝した。「紀州ヨット少年団」のメンバーが乗ったチーム荒川友紀彦選手は4位に。
同大会を二宮さんとともに作り上げ、「紀州ヨット少年団」のメンバーでもあり今大会実行委員長と審判を務めた今津浩平さんは「2日間とも雨で初日は軽風、2日目は台風2号の影響を受け時折土砂降り、何とか大会を終えたが、終了と同時に暴風圏に入り飛ぶようにしてヨットハーバーに逃げ帰った(笑)。参加チームが少なかったが選手のレベルはかなり高い大会となった。優勝した長堀選手はユース時代からあらゆるヨットレースで活躍しマッチレースでは国内ランク2位の実力。まだ20歳前半でさらなる活躍が期待される」と話す。
JYMAの戸谷寿男会長は「マッチレースはただ走るだけではなく、勝つための戦術的なことすべてが重要となる。とても中身が濃いのでルールなどがわかってくると見ているだけでもとても面白いと思う。もっと多くの人に見てもらいたいが、日本にはそのための会場がなかなか見つからない。横浜の『みなとみらい』辺りの海上で大きな大会をするのが目標」と意欲を見せる。今津さんは「二宮さんの遺志を継ぎ、マッチレースの普及とレベルアップを目指し、今後も回を重ねていきたい」とも。
「オータムマッチin南伊勢」の開催は、10月22日・23日に予定している。