「丸山庫蔵寺(まるやまこぞうじ)」(鳥羽市河内町)境内で11月、アサギマダラの幼虫やさなぎが見つかり、関係者が成虫になるのを見守っている。
アサギマダラは、2000キロもの距離を移動「渡り」をするチョウとして、全国各地でマーキング調査などが行われているがその生態は謎が多い。県内でも伊勢市の朝熊岳、鳥羽市の離島、神島や答志島、青峰山、南伊勢町の藤坂峠、熊野市の札立峠などで成虫の飛来記録があるが、幼虫やさなぎの生息記録は少ない。
アサギマダラは、成虫は春に北上、秋に南下し渡りをすると思われているが、しない個体もあるなどまだまだ個体差があり謎が多い。成虫は、アザミやヒヨドリバナなど花の蜜を吸い、幼虫の食草となるキジョランやイケマなどのガガイモ科の葉に卵を産み、幼虫、さなぎと変態し成虫となる。
幼虫とさなぎは、同寺の鐘つき堂の山の斜面に生えるキジョランの葉の裏で数匹が見つかった。「これまで成虫の飛来記録は何度もあったが、幼虫とさなぎを見つけたのは今回が初めて」と話すのは、同寺の矢野隆淳住職。「大きく羽ばたいて長距離を飛べるよう、成虫になるまで見守りたい」とも。
丸興山(がんこうざん)庫蔵寺とも呼ばれる同寺は、朝熊山・金剛証寺(伊勢市朝熊町)の奥の院として826年に弘法大師が虚空蔵菩薩を祭り開山したとされる。1561年建立の本堂は1920年に国の重要文化財の指定を受けた。推定樹齢400年以上で全国に2本だけしかないというコツブガヤの巨木が本堂前にそびえ、1993年には国の天然記念物の指定を受けた。大みそかには一般の人にも除夜の鐘をつかせている。