「太陽を運ぶ貨物船」が10月11日の早朝、志摩市阿児町志島・広岡の浜の沖合に現れた。
早朝5時55分、水平線の向こうからオレンジの光が現れ、やがて大きな光の塊となって朝日になった。5時58分ごろには、蜃気楼(しんきろう)の一種でもあるだるまのような形の「ダルマ太陽」に形を変えた。
写真は、そのダルマ太陽が水平線の上に時間とともに全容を現したところに、大型貨物船が横切った瞬間を捉えたもので、貨物船の上に太陽が乗っかって、太陽を運搬しているように見える。撮影に成功したのは、波切中学校(大王町)教頭の向井正明さん。向井さんは9月10日にも、太陽を運んでいる貨物船が西に向かう様子を撮影している。この日撮影した貨物船は東を向いていることから、9月10日に運んだ太陽を持ち戻ったようにもストーリーが描ける。9月10日の太陽は水平線から上がったが、だるまにはならなかった。
ダルマ太陽は、大気と海面の温度差によって海面近くの大気の層がレンズの役割をして屈折し、もう一つの太陽が映る現象のこと。温度差の少ない夏場にはほとんど見ることができない。形がだるまに似ていることからダルマ太陽、ダルマ朝日と呼ぶ。伊勢志摩地方では真珠を作るアコヤ貝の形に似ていることからアコヤ太陽と呼ぶ人もいる。
夏以降の広域伊勢志摩圏内から観測できたダルマ太陽は、9月24日と29日の2日間と、10月に入ってからは2日、5日、10日、11日と4日間観測されている。向井さんは「太陽が貨物船を運んでいるように見えた時、希望を運んでいるようにも見えた。常々朝日にはエネルギーがあり、幸せになると思って毎日撮っている。伊勢志摩地域はダルマ朝日の出現率が高いので多くの人に見に来ていただきたい」と話す。