雅楽師で音楽家の東儀秀樹さんが11月18日、皇学館大学（伊勢市神田久志本町）の特別招聘（しょうへい）教授として初めての講義を行った。

皇学館大学特別招聘教授に就いた東儀秀樹さん、初めての講義

　東儀さんは、奈良時代から1400年間雅楽を世襲してきた楽家（がっけ）に生まれ、宮内庁楽部で宮中儀式や皇居で行われる雅楽演奏会、海外での公演などで主に篳篥（ひちりき）を演奏してきた。1996年、アルバム「東儀秀樹」でデビュー。今年3月に自身の15周年を記念したベストアルバム「TOGI」を日米同時リリース。 2001年にNHK スペシャル「宇宙 未知への大紀行」の音楽全編担当、さまざまな企業CMへの出演や曲の提供のほか、NHK大河ドラマ「篤姫」に孝明天皇役で、TBSドラマ「MR.BRAIN」では殺人犯で木村拓哉さんと共演するなど、音楽以外でも活躍する。

　東儀さんは、2009年11月3日の宇治橋渡始式の日に伊勢神宮内宮神苑で行われた奉納コンサートで、今年4月29日の同大学創立130周年再興50周年の記念事業での演奏会で、それぞれ同大雅楽部と共演したことが縁で、今年7月1日に同大特別招聘教授に就任した。

　この日東儀さんは、午前と午後に90分間の講義2講を持ち、午前の講義では日本の文化や格式にのっとった雅楽について、午後の講義では自由な音楽、自身の不思議な体験談、篳篥、笙（しょう）、龍笛（りゅうてき）について、同大の雅楽部、祭式研究部、能楽部、大学院専攻科の学生ら約50人にわかりやすく教えた。

　東儀さんは「雅楽とは、日本固有の音楽と朝鮮半島や中国大陸などから伝わった音楽が熟成され、平安時代中期に完成し、原形のまま存在している世界最古の音楽芸術。陰陽道（おんみょうどう）といわれる古代の哲学や天文学や統計学、自然界との調和などが織り込められたもの。祭典など儀式での雅楽演奏では自我を捨てる必要がある」と説明する一方、「古典をしっかりと学ぶ必要はあるが、とらわれる必要はない。音楽とは自由なもの。僕は篳篥でビートルズの曲を演奏したら面白いだろうなと思ってやってみた。楽しいということ、先入観を排除し、一歩前に出る勇気が大切」と訴えた。

　講義では、一青窈（ひととよう）さんの「ハナミズキ」や平原綾香さんの「Jupiter（ジュピター）」を演奏して聞かせたり、自前の笙を神道学専攻科の尾田交之（ともゆき）さんに吹かせて、自身は篳篥を吹き即興でセッションをしてみせたりした。講義終了後も学生たちの質問に丁寧に答えていた。

　神道学部4年の園田恵里さんは「東儀先生の講義は、雅楽のことだけでなく、宇宙のこと、精神的なこと、人生勉強に、とても得るものが大きく感動的だった。今後の講義でも多くを学びたい」と感想を漏らした。

　東儀さんの講義は今後も継続的に行われる予定。