伊勢湾に面した大淀(おいず)海岸のすぐそばにある飲食店「清昇丸」(多気郡明和町、TEL 0596-55-3317)オーナーの下井清史さんが考案したケーキが、「びっくりして楽しい」と話題を集めている。
下井さんが考案した「会話が弾むケーキ」とは、チョコレートケーキのような茶褐色の表面にピンクとイエロー、グリーンでデコレーションされた直径18センチのホールケーキ。
「これまでは、お孫さんがおじいちゃんやおばあちゃんをびっくりさせようと、敬老の日や誕生日、クリスマス用など記念日に注文してくれることが多かったが、最近はその驚かされた当人たちが、ほかの人を驚かそうと予約を入れてくれる」(下井さん)と打ち明ける。
アナゴの陸上養殖を成功させた「しもい水産」(同)が直営する飲食店で、伊勢湾で取れる新鮮な魚介類や養殖したアナゴやフグなどを提供する同店。20年の経歴を持つベテラン漁師でもある下井さんが、アナゴの水揚げ量の減少を食い止めようと15年前にアナゴ養殖の研究を開始し実現させ、そのアナゴを提供しようと2010年2月に開業した。
「会話が弾むケーキ」の正体は、煮アナゴの押しずし。茶褐色のそれは地元で取れ養殖した煮アナゴ。ピンクとイエロー、グリーンのデコレーションは、甘酢平切り紅ショウガと錦糸卵、グリーンピースで、ケーキのスポンジに当たる部分は酢飯になっている。アナゴは大きく育てた7~8匹を煮込み、隙間なく敷き詰めた。
開発のきっかけについて、下井さんは「昔から地元で食べられていた郷土に伝わるアナゴずしをもっと多くの人に知ってもらい食べてもらいたいと、まず八角形のアナゴ押しずし『穴子ずし』を考案した。おいしいと言っていただきテークアウトの注文も次第に増え始めた。ある時お客さまから『結婚式の2次会に持っていくのに変わったものがないか』とリクエストされ、ケーキの形にしたら面白いのでは?とノリで作ったのが意外に受けた(笑)」と話す。
下井さんは「地元のお年寄りの方が『孫からケーキをもらったので甘いものだと思いコーヒーを用意して、いざ食べようと開けてみるとアナゴずしだったのでびっくり。食べてみたらとてもおいしかったので、またまたびっくり。おかげで孫との会話も弾んだ』とわざわざ当店まで足を運んで報告に来てくれたのが、とてもうれしかった」とエピソードを披露する。
価格は3,150円。完全予約制。 八角形の「穴子ずし」(850円) 、「紅白穴子ずし」(1,000円)のテークアウトも受け付ける。