日本神話「天孫降臨」で、邇邇芸尊(ににぎのみこと)らを先導したと道先案内人とされる猿田彦大神を祭る猿田彦神社(伊勢市宇治浦田)で5月5日、三重県無形文化財のお田植え祭り「御田祭(おみた)」が行われた。
五穀豊穣、大漁満足を祈願する同祭は、鎌倉時代から続くとされる。八乙女(やおとめ)が玉苗を植方(うえかた)に運び、田植えが始まる。楠部町の男8人女8人の植方、2人の植綱(うえづけ)の計18人が桃山時代の風俗を残した装束を着て一列に並び、一苗一苗を丁寧に挿苗する。囃方(はやしかた)は作業終了まで、笛や太鼓による田楽を奏で、祭りを盛り上げる。
田植えが終わると神田の中央に、長さ約3メートル、直径約1.15メートルの大きのうちわを持った植方2人がその年の豊漁、豊作を占う「団扇角力(うちわずもう)」をとる。
団扇角力が終わると、場所を同神社拝殿前に移動し、「ハエーヤハエ、ハエーヤハエ」と掛け声をかけながら踊る「豊年踊り」が植方らによって行われる。最初の「ハエ」には「生える・早く大きくなれ」、後ろの「ハエ」には「栄える」という願いが込められているという。踊りが終わると団扇角力で使用したうちわを破る「団扇破り」が行われ、参列者らはうちわの紙片を取ろう一目散にうちわに群がった。紙片を持っていると、健康や火除けのお守りになるという。
神田は、約500平方メートルで、うるち米(コシヒカリ)ともち米(カグラモチ)の2種類の苗を植え、8月下旬に刈り取る予定。11月23日の新嘗祭(にいなめさい)に初米を奉納後、うるち米は同神社猿田彦大神への毎日の神撰として、もち米は元旦の鏡餅として使用される。同神社では、伊勢神宮式年遷宮のお白石持ち行事への参加するための「浜参宮」が土日を中心に増加している。