「富士山の夜明け」200キロ離れた伊勢から世界遺産登録後初観測、太陽柱も

「富士山の夜明け」200キロ離れた伊勢から世界遺産登録後初観測、太陽柱も。朝日が右肩から上がり始める瞬間(撮影=泊正徳)

「富士山の夜明け」200キロ離れた伊勢から世界遺産登録後初観測、太陽柱も。朝日が右肩から上がり始める瞬間(撮影=泊正徳)

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 ユネスコの世界遺産委員会で6月22日に世界文化遺産登録された富士山を祝うかのように翌朝の23日、直線距離で200キロ離れた伊勢の地からくっきりと美しい富士山のシルエットが朝日と共に浮かび上がった。まさに「富士山の夜明け」だ。

世界遺産登録された富士山と朝日、200キロ離れた伊勢の地からくっきりと。太陽柱の画像はこちらから

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 「富士山の夜明け」は、標高555メートル・伊勢志摩で最も高い「朝熊岳(あさまだけ)」(伊勢市朝熊町)山頂付近から撮影したもの。山頂付近まで自動車で上ることができる観光有料道路の「伊勢志摩スカイライン」を運営する三重県観光開発(津市)の計らいで、21日の夏至から3日間限定で日の出時刻に間に合うように通常の開門時間6時からを3時30分に早めたことが奇跡を生んだ。この時期は梅雨と重なるため天候が不安定で観測条件は最悪に近い。これまでは道路のゲートが閉まっているため撮影しようと思えば登山しかなかった。

 この日の3時30分の時点では、雨が降り空一面が雲で覆われていたが、時間とともに少しずつ明るくなり3時50分ごろには、水平線の少し上に雲と雲が別れわずかな隙間ができ、そこだけ赤く染まり出した。4時28分ごろ、太陽の光が空気中の氷の結晶を通して反射し柱のように見える「太陽柱・サンピラー」が現れ、垂直に柱を伸ばしていった。それと同時に覆われていた真っ黒な雲が真っ赤に染まり幻想的な空気を作った。朝焼けの空の色が薄くなると4時45分ごろ、富士山の右肩が明るくなり太陽が現れ、さらに明るい光を放ち伊勢湾に浮かぶ三島由紀夫原作の映画「潮騒」の舞台になった神島も輝いた。

 山頂にいたカメラマンや一般の人たちは誰もが興奮し、その幻想的な光景に感動していた。伊勢の夜空や山々を撮影しているという伊勢出身の宮嶋浩一さんは「思わずシャッターを押すのを忘れてしまった。本当は撮影せずに直接この目で見ていた方がより心に刻まれたのでしょうが…。この場にいることができただけでただただ感謝」と感想を漏らした。岐阜から駆けつけた家族連れは「世界遺産登録の翌日に伊勢から富士山がこんなにもくっきりと見えるなんて、神がかってる」と言葉を詰まらせた。カップルは「富士山の右肩から朝日が上がることも、経済が右肩上がりで良くなる兆しであって欲しい」と期待を込めた。

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