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「神の計らいか?」悪天候の中、夏至に伊勢・朝熊山山頂から富士山現る

「神の計らいか?」悪天候の中、夏至に伊勢・朝熊山山頂から富士山現る。手前に浮かぶ島が神島

「神の計らいか?」悪天候の中、夏至に伊勢・朝熊山山頂から富士山現る。手前に浮かぶ島が神島

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 太陽が最も北寄りに位置する6月21日夏至の日、標高555メートルの「朝熊(あさま)ケ岳・朝熊山」(伊勢市)山頂から直線距離で203キロ離れた霊峰・富士山が一瞬だけ顔を出した。

「神の計らいか?」伊勢湾口に浮かぶ神島と富士山

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 同山へ車で登るには観光有料道路「伊勢志摩スカイライン」を通らないと登ることができないが、「今年試験的に夏至の日だけを開門した」と、道路を管理する三重県観光開発(津市)の西村さん。この日の日の出時刻は4時40分。3時30分の開門を待って頂上まで登った人は、同日に開催された二見興玉神社(二見町)の夏至祭と重なったことや朝から雨が降る悪天候、告知不足などが原因で10人だけだった。

 4時25分ごろ、御嶽山(3067メートル)の方向の空が赤くなり、続いて富士山(3776メートル)の方向の空があかね色に輝き始めると、そこに居合わせた人たちから「おー」と一斉に歓声が沸いた。そして左右対称の美しい稜線(りょうせん)が少しずつ現れ、赤く染まる空をバックに富士山とわかるシルエットになった。約3分間の「奇跡」の後、再び厚い雲が覆い、鈍(にび)色の空に戻った。カメラマンらは「神がかりだ」「神の計らいか」と興奮していた。

 朝日が上がる位置は、夏至に向かって一日一日少しずつ北(左)寄りに移動する。夏至を境に今度は冬至に向かって南(右)寄りに移動、朝日はそのサイクルを宇宙誕生から何度も繰り返している。夏至の日に同山頂上から富士山が確認できる時には富士の右肩の宝永山から朝日が出現する。これまで多くのカメラマンはその光景を撮影したいと望んでいたが、同道路ゲートが閉門しているため深夜からの「登山」以外に実現しなかった。

 同山には、伊勢神宮の鬼門を守るといわれる金剛證寺(同市朝熊町)が山頂近くに立つ。創建は6世紀半ば1400年以上前。平安時代の825年に弘法大師空海が真言密教の一大道場として発展させたが、その後衰退。1392年に建長寺(神奈川県鎌倉市)71世の仏地禅師が再興し、真言宗から臨済宗に改宗し現在に至っている。

 伊勢出身のプロカメラマン高田健司さんは、その「奇跡」を目撃した一人。「今回は3時間掛け登山し頂上から撮影するつもりだったので、伊勢志摩スカイラインの早朝開門はとてもありがたかった」と打ち明ける。「今年の夏至は、朝熊山の天空で、神と仏が出会い、東の海のかなたの空へ去っていった。残念ながら日の出の時間帯に雲が湧き、朝日と富士山の共演は撮れなかったが、梅雨と台風がコラボして神々しい光景を作り、とても幻想的だった」と振り返る。

 西村さんは「今回は試験的な取り組みだったが、私も現場にいてとても興奮した。夏至の撮影ポイントとして多くのカメラマンに認知されるようになればと思う。来年はもう少し開門日時を増やしたい」話す。

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