映画「ALWAYS 三丁目の夕日」などを手掛ける志摩市出身の山際新平さんの母校・船越中学校(志摩市大王町船越)が昨年3月に閉校になることがきっかけとなって完成した映画「校歌の卒業式」の自主上映会が今、全国で同じ境遇を持つ人たちによって開催されている。
同作は、「生まれ育った町から学校がなくなること」「校歌がなくなること」の裏に秘められた大切なものを浮き彫りにする。撮影は町全体を巻き込み、キャストには町の人たちをできるだけ多く起用し、素人ながらに母校がなくなるリアルな思いを伝えている。
手塚治虫原作の「ジャングル大帝」のアニメーション監督などを務める宇井孝司さんが監督を務め、ヒロイン役の転校生に映画「初めての家出」や「60歳のラブレター」に出演する女優の金澤美穂さん、音楽の先生役にピアニストの佐田詠夢さんとその兄役にバイオリニストの佐田大陸さん(実際の兄妹で父親は歌手のさだまさしさん)が出演し、「リアルな思いを持つ」町の人たちと共演する。
三重県いなべ市は、員弁町、大安町、藤原町、北勢町の4町が合併してできた。現在小学校15校、中学校4校あるが、その内の藤原町にある小学校5校が1校に統合されようとしている。そこで、同校に通う児童や同校を卒業した人たちに「校歌の卒業式」を観てもらおうとNPO法人いなべ市文化協会(いなべ市北勢町、TEL 0594-82-1551)が8月31日に上映会を企画した。当日は、宇井孝司監督、佐田詠夢さん、アンパンマンのバタコさんの声優として活躍する佐久間レイさんの3人による「声とアニメーションとピアノによる三重奏」の催しも行われる。14時30分開場、15時開演。大人=1,000円。
山際さんは「現在、この映画は自主上映会かDVDでしか観ることができないが、観てくれる人の輪が少しづつ口コミで全国に広がっている。いなべ市でも多くの人に見てもらえる機会ができたことはとてもありがたい」とコメントを残す。
文部科学省によると、2004(平成16)年の577校をピークに、毎年400~500校が日本の各地域で閉校しているという。子どもたちがいなくなった校舎の再利用など目に見えるハード面でのケアは各自治体などで検討されているが、コミュニティーや心の拠点となっていた学校の目に見えないソフト面でのケアは放置されたままだ。山際さんは「母校の閉校をきっかけにしてできた映画だが、地域を愛する人にはぜひとも観てもらいたい。生まれ育った町についてもう一度考えるきっかけになれば」と訴える。