伊勢神宮内宮(ないくう)別宮の「月読宮(つきよみぐう・つきよみのみや)」(伊勢市中村町)と「月読荒御魂宮(つきよみのあらみたまのみや)」で10月6日、神様のお引っ越し「遷御(せんぎょ)の儀」が厳かに執り行われた。
台風18号が同5日の晩から日本列島を縦断し、伊勢地方にも6日の午前まで強風と大雨をもたらした。誰もがこの日の祭典開催を心配したが、午後から青空が広がり、遷御の儀が行われる20時(月読宮)と22時(月読荒御魂宮)には、月の神様にふさわしい「十三夜」の美しい月明かりの下での祭典となった。旧暦の8月15日の「十五夜(中秋の名月)」と共に、日本では古来より旧暦の9月13日の「十三夜」の月がもっとも美しいとしてこの日に「お月見」をする風習が残る。10月6日は旧暦の9月13日。
昨年の10月2日と5日に伊勢神宮の内宮と外宮(げくう)の正殿、同10日と13日に内宮別宮の「荒祭宮(あらまつりのみや)」と外宮別宮「多賀宮(たかのみや)」でそれぞれ「遷御の儀」が行われた。伊勢神宮の式年遷宮は、もう全て終わったように思われているが、実はまだまだ続いている。「式年遷宮第2章」となる伊勢神宮125社ある内の残りの121社の最初の「遷御の儀」が同宮で執り行われたのだ。
伊勢神宮内宮が太陽の神様である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祭るのに対して同宮は、天照大御神の弟神にあたる月の神様「月読尊」を祭る。古事記では、月読尊は、伊邪那伎命(いざなぎのみこと)の右目から生まれ、左目から生まれた天照大神の弟神に当たり、鼻から生まれた建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)の兄神に当たるとされる。
一般的に伊勢神宮の遷宮は右から左もしくは左から右に移動するが、同宮では前後(南北)に行われる。同宮には、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)を祭る伊佐奈岐宮(いざなぎのみや)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)を祭る伊佐奈弥宮(いざなみのみや)が月読宮と月読荒御魂宮と共に横一列に並んで立つ。
月読宮は、内宮別宮10宮の一つ。同名で字の違う「月夜見宮」(宮後)は外宮別宮4宮の一つ。10月10日の20時と22時、今度は伊佐奈岐宮と伊佐奈弥宮で遷御の儀が執り行われる。