広域伊勢志摩圏内のホテルや旅館、飲食店の料理長らが集う「伊勢志摩料理クラブ」(会長=掛橋友二さん)に、今年成人式を迎えたばかりの2人の若手料理人が入会した。
2人は、東京出身の加藤大智さんと兵庫出身の森川晋嗣さん。共に通信制の代々木高校(志摩市阿児町)の「伊勢志摩料理人コース」の卒業生だ。高校入学と同時に16歳から料理の道に進んでいるためすでに経験は5年目。現在、加藤さんは旅館「千伊勢かぐらばリゾート 千の杜」(伊勢市佐八町)、森川さんは旅館「浜離宮」(鳥羽市鳥羽)で働いている。
同コースは、2007年に開設した特別コースで、伊勢志摩の旅館やホテルなどで働き、料理の勉強・経験を積みながら高校に通い卒業を目指すことができる。生徒は各施設の寮に住み込み月々の給与を支給されながら、修業中の時間も単位として認められ、さらに在籍中に調理師免許やふぐ取り扱い資格の取得もできるメリットがある。
同コース立ち上げ時から同クラブ会長の掛橋さんを中心に同クラブが支援し、若手の人材育成を手掛けてきた。掛橋さんは「今やイタリアンシェフやパティシエなどになりたい人が多く、和食を目指す人は少なくなっているため、この地域でも和食の料理人の人材は不足している。大学を卒業してから調理人を目指そうと思うと、それだけで4年のブランクができるので、高校生である16歳から包丁を握ることは全てにおいてメリットがある」と話す。
さらに掛橋さんは「若い人がこの世界に入ってくれることはそれだけで活気が出る。実際に代々木高校の生徒たちが働いている厨房に行くと、生き生きしていて、職場が明るい。働いている人は『何かを教えてやろう』という気になり、普段の単調な仕事にもアクセントが付き相乗効果が得られる」とも。これまで同コースから10人以上の生徒が同クラブメンバーの施設で学び働いている。
同クラブは、若手料理人の人材育成や会員同士の親睦、情報交換などを通して、食の品質向上などを目指している。年2回、春と秋に料理講習会を行っている。会員は約80人でほとんどが料理長や副料理長など責任のある役職についている人ばかり。2月25日には、同クラブの8回目の年次総会が飲食店「鳥羽割烹 たまも」(鳥羽市安楽島町)で開催され、2人は晴れて会員として認められた。
加藤さんは「仕事はまだまだ大変だが、頑張って行きたい」、森川さんは「今は修行の身。ただひたすら無心になって技術を身につけるだけ。皆さんの期待に添えるように頑張りたい」と意欲を見せる。