伊勢神宮大宮司の鷹司尚武(たかつかさなおたけ)さんが6月12日、第62回式年遷宮に伴う一連の行事完了を報告する共同記者会見を神宮司庁(伊勢市宇治館町)第一会議室で開いた。
共同記者会見は、10年間の遷宮行事が今年3月15日に行われた外宮(げくう)風宮の「遷御(せんぎょ)の儀」をもって完結したことを受けてのもの。
鷹司大宮司は「この度の遷宮を振り返り、戦後70年、4度目の遷宮であり、これまでの『官』国が運営していた国家神道の伊勢神宮から宗教法人として『民』の運営になったこと。1998(平成10)年前後から準備し、社会状況からすれば遷宮費の確保が非常に厳しい状況、2007(平成19)年にはリーマン・ショックがあったが、1年早く目標額を集めることができ胸をなで下ろした。マスコミ・メディアによる神宮の紹介、広く国内に紹介されたことが全国的な後押しにつながった。『国民総奉賛』が定着し、2013年には1420万人、翌年も1000万人以上の人に参拝いただき国に代わってご奉賛できたことに感謝する」と話した。
今年1月に発表された天皇陛下の御製「あまたなる人らの支え思ひつつ 白木(しらき)の冴(さ)ゆる新宮(にいみや)に詣(もう)づ」を挙げ、1300年に渡り伝えられてきた式年遷宮が携わる人々の最善の努力の結集によって継承されたことは「世界に誇れるあまりある美挙」と形容した。
遷宮で使われるヒノキを育てる「神宮の森の200年計画」について、今回の遷宮で伊勢の山から切り出したヒノキが一部で使われたこと、伝統技術の継承、後継者養成など、門戸を広げて若手を起用したことについても言及。「終わりは次の始まり。すでに準備の準備が始まっている。伝統を守りつつ、次回の第63回にも人々の力を結集し、時代に即応した考え方を柔軟に積極的に取り入れて、その時の遷宮に何が必要かを考え、次の人たちに伝えたい。神宮はいつの時代も携わる人々のその時その時にできる最善を結集=ベストエフォートでひたすら日本人の心の故郷を守り続けてきた(マキシマムエフォートでは継承できない)」とも。
一方「遷宮で身に着ける装束は特別なもので、普段のものと比べて8キロも重くなり歩きにくかった。渡御(とぎょ)の列を組んで歩くときの時間が非常に長く感じた。リハーサルは一切なく、誰が何をするかは決められているが、どうするかについての資料がなく、とても緊張した」と打ち明けた。
来年、志摩市で開催される主要国首脳会議(サミット)で、安倍晋三首相が各国首脳に伊勢神宮を参拝してもらう意向を示したことについて「日本の伝統をアピールでき、神宮としては大歓迎。神宮の基本的なスタンスはサミットであろうが、来る人たちが気持ちよく参拝してくれること。神宮の歴史や自然と共生、日本の優しさを感じ取っていただければ」とコメントを残した。