伊勢神宮に仕えた皇女「斎王」とその居所「斎宮(さいくう・いつきのみや)」の歴史を紹介する県立の博物館「斎宮歴史博物館」(多気郡明和町、TEL 0596-52-3800)で現在、日本最古のいろは歌が書かれた土器が公開されている。明日7月12日まで。
国史跡に指定されている斎宮跡は、古代から中世にかけて約660年間に渡り天皇に代わって伊勢神宮に使えた未婚の皇女「斎王」の宮殿があった場所。遺跡の規模は東西約2キロ、南北約0.7キロ、総面積は約137ヘクタールでおよそ甲子園球場35個分に相当する。1970(昭和45)年から本格的な発掘調査が始まった。
日本最古のいろは歌の墨書土器(ぼくしょどき)は、2010(平成22)年に行われた斎宮跡第171次調査において出土。ひらがなで書かれた「いろは歌」としては日本最古となる。土器は、土師器(はじき)の皿で、平安時代後期にあたる11世紀末から12世紀前半ごろのもの。繊細な筆跡で皿の内側に「ぬるをわか」、外側に「つねなら」と墨で書かれている。
同博物館では「斎王が居住した内院と考えられる一画から出土したことから、斎王に仕える女官が、文字を覚えるために書いたものと考えられる。現地で採用された女官が、都から来た高い教養を持った女性から文字を教わっていたのか…。斎宮に都の王朝文化がいち早く伝わり、広がっていった様子がうかがえる。今回の発見は『いろは歌』やひらがなの普及を考える上で歴史的な発見だけでなく国文学的な発見としても各界の関係者の間でも注目されている」話す。
いろは土器の公開は、6月から始まった「逸品~エントランス無料企画展示~」の第1弾。同館調査研究課技師の宮原佑治さんは「いろは土器は明日までの公開ですが、今回見逃すと修復作業などを行うため1~2年後まで見ることができないので、ぜひ直接ご覧いただき、斎宮に仕えた女官の思いをいろは土器から感じていただければ」と呼び掛ける。
開館時間は9時30分~17時。休館日は、月曜日(祝日・休日である場合を除く)、祝日・休日の翌日、12月29日~1月3日。入館料は、一般=340円、大学生=220円、小・中学生・高校生=無料。