赤とんぼが空を舞う神宮神田(伊勢市楠部町)で9月2日、秋の実りに感謝し稲を刈り取る「抜穂祭(ぬいぼさい)」が執り行われた。
伊勢神宮の祭典などで使う米を栽培する伊勢神宮神田は、約3ヘクタール。計21枚に区画され伊勢神宮を流れる清らかな五十鈴川の水を引き込み、うるち米の「チヨニシキ」「キヌヒカリ」「イセヒカリ」や、もち米の「カグラモチ」「アユミモチ」など十数種を栽培する。
インターネット上で「幻の米」と呼ばれる「イセヒカリ」は、同神田で見つかった。1989年の2度の台風でほとんどの米が倒された中でコシヒカリの田の中央に2株だけ倒されずに残っていた奇跡の稲を調べたところコシヒカリの突然品種であることがわかった。後にこれを酒井逸雄少宮司が「イセヒカリ」と命名した。
この日は、鷹司尚武大宮司をはじめ、8月1日に高城治延さんから交代したばかりの亀田幸弘少宮司ら神職や地元楠部町の住民らが見守る中、黄色の装束を着た作長(さくちょう)の山口剛さんの指示で白装束の作丁(さくてい)2人が神職より授けられた忌鎌(いみがま)と呼ぶ鎌を持って神田に入り、黄金色に色づいた稲を刈り取った。刈り取った稲を10人の作丁がその場で稲穂だけを1本ずつ抜き取り、麻のひもで2つに束ねて「抜穂」を作り、神さまに奉納した。
同神田ではこの後、天候などを見ながら約1カ月をかけ全ての稲を刈り取り乾燥させ、内宮の「御稲御倉(みしねのみくら)」に150束、外宮の「忌火屋殿(いみびやでん)」に108束を納め、10月15日から始まる「神嘗祭(かんなめさい)」で初めて神さまに新米をささげる。