暮らす・働く 学ぶ・知る

鳥羽市国崎で伊勢神宮に納める熨斗アワビ作り 2000年超続く

鳥羽市国崎で伊勢神宮に納める熨斗アワビ作り 2000年超続く(撮影=岩咲滋雨)

鳥羽市国崎で伊勢神宮に納める熨斗アワビ作り 2000年超続く(撮影=岩咲滋雨)

  • 81

  •  

 太平洋を一望する鎧埼(よろいざき)にある伊勢神宮の「御料鰒(あわび)調製所」(鳥羽市国崎町)で現在、伊勢神宮の祭典で神饌(しんせん)として納める「熨斗鰒(のしあわび)」作りが行われている。

【その他の画像】伊勢神宮御料鰒調製所で熨斗アワビ作りの様子

[広告]

 2000年以上前、伊勢神宮を創建したとされる垂仁天皇の皇女「倭姫命(やまとひめのみこと)」が国崎(くざき)を訪れた際に、海女の「おべん」がアワビを倭姫命に差し出し、あまりのおいしさに感動したことから、伊勢神宮に献上するように命じ、国崎を御贄処(みにえどころ)として定めたことから、それ以来、熨斗鰒作りが行われている。

 木造平屋建ての調製所は、作業場のほかに身を清める潔斎場があり、調製所のさらに高い所にはアワビの干し場がある。鎧埼は倭姫命が岬で鎧を外したことから名付けられたと言われ、倭姫命が巡行した地とする碑も岬の森の中に立つ。徒歩5分の場所にはおべんを祭る「海女潜女(あまかづきめ)神社」があり、祭殿には1.5キログラムの大きさのアワビの殻が奉納されている。

 作業は、まず生きた新鮮なアワビを殻から外し肝を取り除き、束子(たわし)できれいに水洗いすると、熨斗刀と呼ぶ半月状の包丁で外側から渦巻き状にリンゴの皮をむくようにアワビの身を薄くそいでいく。その作業が終わると干し場に、1本に長くなったアワビを竹ざおに丁寧に垂らしながら干していく。その後、琥珀(こはく)色に乾くと竹筒で押して伸ばし、長さをそろえて切り、平らな熨斗鰒をわらで束ねて作る大小の「身取鰒(みとりあわび)」、細い熨斗鰒2枚ずつをわらで結んで12段にしたもの2つをセットにした「玉貫鰒(たまぬきあわび)」を完成させる。

 「国崎熨斗あわび文化保存会」会長の世古與司一(よしかず)さんは「国崎の人たちは伊勢神宮にアワビを2000年以上納め続けている。昔は熨斗鰒用に大きいアワビを中心に使っていたので、薄くそいだアワビの長さが3メートル以上になったといわれている。今年も5月に作業を始め、9月14日の海女漁が終わるまでの期間、熨斗鰒作りは続く」と話す。

 同保存会では、熨斗鰒「身取鰒」「玉貫鰒」のほかに、生アワビ1190個、干しアワビ234個、干しサザエ3710個とアラメ、ワカメの乾燥した海藻を伊勢神宮に納めている。

 世古さんは「熨斗鰒は伊勢神宮の『三節祭(6月と12月の月次祭、神嘗祭)』で神饌として使われるとても重要なもの。未来永劫(えいごう)、これからも熨斗鰒を伊勢神宮に納め続けられるようにするのが、われわれ国崎の人たちの使命」と話す。

伊勢志摩経済新聞VOTE

現在お住まいはどちらですか?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース