三重県雇用経済部県産品振興課が11月25日、3人のシェフを招き「ガストロノミー実践講座」をオランジェガーデン五十鈴川(伊勢市中村町)で開いた。
【その他の画像】「みえガストロノミー人材育成講座」11月25日伊勢にて
同講座は、三重県が昨年度から企画する「みえガストロノミー人材育成講座」の一環。県内の豊かな食材や食文化に焦点を当て、ガストロノミーの基礎を習得し、「三重にしかない」食を提供できる事業者を育成することを目的に、料理人や料理人を目指す人を対象に実施。将来、県内の観光消費額や宿泊日数の増加につないで「ガストロノミーツーリズム」(その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズム)を推進していくことを目指して取り組んでいる。
本年度は、「ガストロノミー」についての知識や最新のトレンド、先進取組のほか、インバウンド対応について学ぶ「ガストロノミー発信講座」を10月8日に、雑誌「料理王国」の柴田泉編集長ら有識者を招いて座学を開き、「ガストロノミー実践講座」として10月28日と11月25日の2回、地元伊勢志摩と東京、ガストロノミー先進県である新潟でそれぞれ活躍するシェフ3人計6人を招き、調理法などを学ぶ実践講座を開いた。10月28日は、地元「THE HIRAMATSU HOTELS&RESORTS 賢島」(志摩市阿児町)の今村将人シェフ、「TERAKOYA」(東京都小金井市)の間光男シェフ、「オステリアバッコ」(新潟県新潟市)三善将則シェフが実践して見せた。
11月25日は、伊勢神宮外宮(げくう)前でフレンチレストランを構える開業41年の「ボン・ヴィヴァン」(伊勢市)の河瀬毅シェフ、以前相可高校(多気町)食物調理科の生徒にも教え、「高校生国際料理コンクール」の審査委員として三重県とも関係の深い「ジュエルロブション」でエグゼクティブシェフを務めた「Nabeno-Ism」(東京都台東区)の渡辺雄一郎シェフ、発酵食品や乾物、自ら捕ったカモやキジなどを調理するイタリアンレストラン「灯(あか)りの食邸 KOKAJIYA」(新潟県新潟市)の熊倉誠之助シェフが招かれた。
河瀬シェフは、伊勢エビのポシェやタルタル仕立ての料理をメインに、シマアジの燻製(くんせい)に伊勢茶のパウンドケーキを添えた一皿を、渡辺シェフは佐藤養殖場(志摩市磯部町)の三重ブランド「的矢かき」を2個使い、冷たい料理と温かい料理でそれぞれアレンジを変えた一皿を、熊倉シェフは、桑名産のハマグリを稲わら焼きにして、伊勢茶のトルテリーニと共にハマグリのだしで取ったスープ仕立てにした一皿を、それぞれ三重県産の食材をふんだんに使いながら料理を完成させた。
当日は、調理場とセミナー会場をライブ中継し、モニター画面を見ながら調理法を解説するシェフの言葉を、参加者は漏らさないように耳を傾け、真剣にメモを取っていた。名張市の和食店「あん藤」の安藤弘和さんは「伊勢茶のパウンドケーキやサフランのご飯など和食にも取り入れられると思い、参考になった。さらに料理のアイデアの発想が膨らんだ」、志摩市の宿泊施設「汀渚 ばさら邸」総料理長の甘崎和樹さんは「食材のバックボーンを深く知ることの大切さを学んだ。生産者の思いをお客さまのテーブルに届けようと思った」と、それぞれ感想を口にした。
その後の意見交換会で河瀬シェフは「新たな三重のおいしい食材との出合い、当たり前においしいと言ってもらえること、素材に寄り添うこと」、渡辺シェフは「食材へのリスペクト、日本人ならではの感覚、おいしさのストライクゾーンをどこに設定するか」、熊倉シェフは「わざわざ店に来てくれることにお客さまへの感謝、季節の素材、地元の伝統野菜など新潟でしか食べられないもの」と、それぞれ大切にしているものについて話す。全ての料理を試食した大阪のフレンチレストラン「ミチノ・ル・トゥールビヨン」の道野正シェフは「どの料理もとてもおいしかった。素晴らしい取り組み」と3人のシェフと同事業をたたえた。
三重県の同課県産品販売促進班の山本一輝班長は「ガストロノミーを意識した人材を育成し、三重県としてガストロノミーツーリズムを推進していければ。実践講座には2回合わせて約40人が参加。来年度も継続して実施していきたい」と話す。