志摩市磯部町恵利原地区に古くから伝わる「恵利原早餅つき」の保存会のメンバーが1月11日、「おかげ横丁」(伊勢市宇治中之切町)で高速餅つきを披露した。
【その他の画像】志摩の「恵利原早餅つき」かつてはきねをつくスピードが1秒間に2.5回を記録
天保年間(1830~1843年)から伝わるとされる「恵利原早餅つき」は、志摩市にある伊勢神宮の別宮「伊雑宮(いざわのみや)」で毎年6月24日に行われる日本三大御田植祭の一つ「御田植祭」で、多くの人にできるだけ早く餅を提供するために生まれたのが起源とされ、現在まで「恵利原早餅つき保存会」(志摩市磯部町恵利原)によって継承され、伝統芸能として昇華した餅つき。
この日は、3回早餅つきの実演が行われ、「ますます繁盛」の語呂合わせで2升五合の蒸し上がったもち米が臼(うす)に入れられると、同保存会女性メンバーらのはやし唄に合わせて最初はゆっくりと子守唄を歌いながら優しくこね上げる。こね終わると今度は「地つき唄」を歌いながら餅つきが始まり、はやしのテンポが次第に早くなると、1本のきねを2人が交互に取り合いながら手入れを交えてさらに高速できねをつく。つき終った餅は、手早く丸められ志摩市特産のあおさノリとキナコをまぶして完成する。
同保存会会長の森田豊人さんは「コロナ禍で活動がストップしていたが、ようやく本格的に活動できるようになった。かつてはきねをつくスピードが1秒間に2.5回を記録したこともあったが、コロナ禍で出番がなかったこと、メンバーが歳を重ねてしまったことから、その後記録更新はできていない。大勢の人に喜んでもらえることが何よりうれしい。これからもお呼びがかかれば全国どこにでも出かけて行きたい」と話す。「記録更新できる若いメンバーも募集中」とも。
この日は、会場の子どもたちの飛び入り参加もあり、大いに盛り上がった。出来上がった2種類の餅は会場の人たちに即座に振る舞われた。鈴鹿市在住の家族連れは「子どもが初めて餅つきを体験できた。とても楽しかった」と話す。各所でも「おいしい」と言葉が漏れ、会場には笑顔が溢れていた。