
介護付き有料老人ホーム「虹の夢とば」(鳥羽市鳥羽)で8月21日、志摩市産の伝統野菜「鵜方の水なすび」を取り入れた昼食メニューが利用者に提供された。
志摩の伝統野菜「鵜方の水なすび」は、志摩市阿児町の鵜方地区で栽培されていた水ナスで、地域に根ざして自家栽培され今日まで育てられてきた在来品種。生産量が限られ、ほぼ志摩地域だけで消費されてきた食材の一つで、薄い紫色で見た目は一般的な馴染みのナスの形をしているが、水分量が多く、みずみずしく、あくがなく生でも食べることができるのが特長。
当日のメニューは、志摩産のアオサと鳥羽市答志島産のシラスの天ぷら入りの伊勢うどんと志摩市阿児町産の水ナスとオクラの焼き浸しに、フルーツゼリーが付いた。
同施設管理栄養士の小久保じゅんこさんは「当施設の方針として食事にはこだわっている。さらに毎月24日には『虹(24=にじ)の日』として、いつもより豪華な食事を提供する。できるだけ地産地消を心がけ、地元で代々育てられてきた地域でしか食べることができない水ナスを使ってみた。利用者から、『昔(約65年前から)育てていた』『みそをつけて生で食べていた』など、水ナスにまつわるエピソードも多く聞区ことができた。皆さんからおいしいと喜んでもらえてうれしい」と話す。
熊本県大牟田市出身で娘が嫁いだ先が鳥羽だったことからショートステイのサービスを受けている平本セツ子さんは94歳。長崎に原爆が落とされた当時、有明海の先でキノコ雲が上がったのを目撃しているという。鳥羽に来て20年近くになるという平本さんは「伊勢志摩の食材は(熊本と変わらず)とてもおいしい。水ナスは初めてだったが、ジューシーでとてもおいしかった。食べやすいように刻んでもらってあるのもありがたい」と感想を漏らす。
小久保さんは「ズッキーニとピーマンを刻んでみそ炒めにしたり、大葉とミョウガで浅漬けにしたり、一般的なナスを使った料理はいくつか提供してきたが、地元の伝統野菜の水ナスを使ったのは初めて。水分が多いのであっさりと食べてもらえるように冷菜にした。利用者においしいと喜んでもらえると自分たちもうれしいし、何よりも作りがいがある。伊勢志摩には『米澤もち麦』など、ほかにも伝統野菜があるので、これからも積極的にメニューに加えていきたい」という。