「あと200年かかる」壮大な三重県のプロジェクト-幻の宮殿「斎宮」の歴史

大型の四面ひさし付き建物が建つとこんなイメージになる。と説明する職員。斎宮歴史博物館で

大型の四面ひさし付き建物が建つとこんなイメージになる。と説明する職員。斎宮歴史博物館で

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 「単純に計算するだけでもあと200年はかかる」――そう説明するのは、飛鳥・奈良・平安時代に現存していた幻の宮殿「斎宮(さいくう・いつきのみや)」の平成20年度発掘調査成果報告会での倉田直純さん(斎宮歴史博物館・専門監兼調査研究課長)。

斎宮の遺跡調査報告会。建物が建っていた跡を推測しながら説明する。

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 「斎宮」とは、斎王の宮殿と斎宮寮という役所のあった場所のこと。「斎王」とは、天皇に代わって伊勢神宮に仕えるため、天皇の代替りごとに皇族女性の中から選ばれて、都から伊勢に派遣され、古くは、伊勢神宮起源伝承で知られる倭姫命(やまとひめのみこと)など伝承的な斎王もいるが、その実態はよく分かっていない。制度上最初の斎王は、天武天皇(670年ごろ)の娘=大来皇女(おおくのこうじょ)とし、制度が廃絶する後醍醐天皇の時代(1330年ごろ)まで約660年間続き、その間の記録では60人余りの斎王の名が残されている。

 その斎宮跡が、三重県多気郡明和町地区に残りその全容解明のため発掘調査が日々進められている。1970(昭和45)年から三重県では発掘調査を行い、1979(昭和54)年に、東西約2キロ、南北約700メートル、面積約137ヘクタールが国の史跡に指定された。今年で39年目になるが、それでも全体の15.7%の調査しか済んでいない。これまでと同じペースなら単純計算で200年以上発掘調査に時間がかかることになる。

 3月7日に開催された報告会では、2007年から3年間、斎王の住む宮殿「内院」があったと推測される地に隣接する「柳原区画」を重点的に調査。「内院」に隣接すること、都市計画の跡「方格地割(ほうかくちわり)」のほぼ中心に位置すること、大型の三面ひさし付き建物、四面ひさし付き建物が確認されたことなどから、この地区が斎宮の中枢部分「中院」であった可能性が高いと推測する。

 倉田さんは「斎宮、斎王の歴史はまだまだ教科書に出てこない。NHKの大河ドラマなどで紹介されれば『平安の王宮ロマン』に注目が集まり、多くの人に興味を持っていただき、『謎の宮殿』の解明につながるきっかけになるのでは」と期待を寄せる。

 斎宮歴史博物館の開館時間は9時30分~17時。休館日は、月曜日(祝日・休日である場合を除く)、祝日・休日の翌日、12月29日~12月31日。入館料は、一般=330円、高・大学生=220円、小・中学生=無料。

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